組織に熱を与える事業創造の4つのWHY
新規事業に取り組む理由とは?
皆さんの会社にとって、新規事業に取り組む理由は何でしょうか?
新規事業の創出が「あったらよいもの」ではなく、「生き残りをかけた生存戦略」になりつつある今、新規事業に取り組む理由を探すことは難しいことではないかもしれません。
ですが、「市場で勝ち抜くため」「第二の柱を創るため」「社員の雇用を守るため」といった言葉が謳われていたら要注意です。
もしかすると、自社の新規事業が上手くいかない理由はここにあるかもしれません。
今回は新規事業に取り組む理由、つまり「新規事業のWhy」について考えていきます。
事業創造の4つのWhy
新規事業に取り組む理由を考えるにあたって、私たちは2軸を置いて整理して考えています。(図1参照)
一つ目の軸は「経営」と「社員」という人の視点です。
二つ目の軸は「会社全体」と「新規事業単体」という事業の視点です。
2つの軸を掛け合わせて4つの象限から新規事業のWhyを考えます。
しかし、4つ全てに強いWhyがある必要はありません。
自社にとって最も強く掲げるべきWhyは何か。
それが明確になり、繰り返し語られることが重要です。
一番大切な新規事業のWhy
まず考えたいのは、4象限の右上、「経営」×「会社全体」のWhyです。(図2参照)
自社にとってなぜ事業創造に取り組むのか?
経営の見解として掲げるWhyですから、最も本丸となりうる象限と言えます。
事業創造に本気で取り組んでいる多くの企業は、事業創造のWhyを「ミッションの実現のため」だとシンプルに言い切ります。
新規事業のトップランナーであるリクルートグループでは、自社の使命である
「まだ、ここにない、出会い」「新しい価値の創造」
をさらに広く強く実現するためだと謳っています。
また、独自の製品ポリシーを掲げ、化粧品通販事業で急成長している株式会社ランクアップも、新規事業に力を入れている会社です。
「たった一人の悩みを解決することで世界中の人たちの幸せに貢献する」をミッションに掲げる同社は、化粧品事業以外の悩みも解決できる存在になるために事業創造に真摯に取り組んでいます。
「悩みの数だけ事業をつくる」とWhyを語る岩崎社長の周りには、たった一人の悩みを解決するために事業創造に挑戦したい社員が育っています。
過去の取り組みから新規事業のWhyを紐解く
うちの会社はそんなに生きたミッションはないよーという方もいるかもしれません。
私は経営じゃないからそんなWhyはつくれないし…という声も聞こえてきそうです。
でも、大丈夫です。
自社の事業がこれまで果たしてきた使命や
どんな存在でありたいと思っているのか、を紐解いてみてください。
それらを棚卸し、再解釈することで
自社にとっての事業創造のWhyを“つくる”ことができます。
あなたが経営者じゃなかったとしても、
考え、言葉にし、語り始めることで、徐々に広がっていきます。
そうしてつくったWhyを、可能な限り経営やキーマンにも耳打ちし
公的な場所で一度でも多く発信してもらいましょう。
こうした地道な活動を通じて、最初は誰か一人が語り出した小さなWhyが
自社にとってのオフィシャルなWhyへと昇華していく様子を何度も目撃しました。
挑戦行動を後押しする
つぎに、右下、社員×会社全体のWhyです。(図3参照)
これは、社員の挑戦促進がWhyになると良いと考えます。
失敗を恐れ挑戦行動がなかなか起こらない成熟企業において、目を向けるべきは
「できる仕事に飽きた」
「陳腐化する技術ばかりで将来が不安だ」
「新しいことに挑戦したい」
そんな想いを持った社員の存在でしょう。
誰にも頼まれていない課題を自ら引き受け、何とか形にしようと試行錯誤するそのプロセスにおいて内発的動機をもとに事業を生み出す挑戦者が育ちます。
また、日常の重力の中では挑戦に二の足を踏んでしまう社員に、事業創造を通じて機会を提供し挑戦の後押しをすることは、風土醸成の観点からも非常に意味のあることだと考えます。
社員のライフミッション実現
3つめは左下、社員×新規事業のWhyです。(図4参照)
これは、新規事業に取り組む社員のライフミッションの実現を後押しします。
ミッションにまっすぐ取り組む会社が強いように、
人生賭けて果たしたいライフミッションに個人が覚醒すると
どんな困難も跳ね返す原動力になります。
同時に、こうした社員にとって、自らのライフミッション実現に
繋がる事業に挑戦できるフィールドは魅力的に映ります。
エンゲージメント向上にもつながるでしょう。
最もピュアな事業創造のWhy
最後に左上、経営×新規事業のWhyです。(図5参照)
これは、課題(不)の解決です。
これから立ち上がろうとしている新規事業で、自社が引き受けるべき課題、まだ手付かずの不を解決するため。
これが4つ目のWhyです。
「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」を謳うラクスル株式会社は、デジタル化が進んでいないアナログな産業にインターネットを持ち込むことで産業構造の変革を目指しています。
創業事業であるラクスル(印刷業界の不の解決)に加えて、ノバセル(広告業界の不の解決)、ハコベル(物流業界の不の解決)、ジョーシス(情報システムの不の解決)と新規事業を次々に打ち出すことによって、各産業の根深い不を解決することに挑戦しています。
▼2021年9月1日にリリースされたばかりのジョーシスのサービス動画を見ても、ユーザーが抱える不を非常に解像度高く絞り込み、事業を作っていることがわかります。(大変勉強になります。ぜひご覧ください)
自社にとって、世の中にとって、解決すべきだと思える不がそこにあるから。
この4つ目のWhyが最もピュアな事業創造のWhyであるとも言えます。
WHYから始めよう
今日は、事業創造の4つのWhyを考えました。
皆さんの会社のWhyはどんなものですか。
それは社員に火をつけ、事業創造に取り組む理由になっていますか。
「Whyから始めよ」の言葉通り、自社の本当のWhyとは何か?
一度立ち止まって考えるきっかけになれば幸いです。
*ランクアップ様の取り組み事例をこちらで紹介しています