COLUMNSコラム

人創り

日本企業で、なぜwillは育まれないのか?

2024.09.24

初めまして。michinaruの岡部です。2024年4月にジョインしました!
新卒からHRを経験し、その後クライアントサイドに立ってこれまで数々の大手企業の新規事業支援をさせていただきました。そして、ここ最近は、事業創出には組織づくりが欠かせない、ということを痛感する日々を過ごしていました。

そんな中、新卒時代の会社が一緒だった先輩が立ち上げたmichinaruに出会い、「挑戦と応援が循環する社会を創る」というミッションを聞いて、まさに課題意識を強く持ちチャレンジしていきたいことだと感じました。

また、現在私はデイタイムでビジネススクールにも通っていますが、そんな挑戦をも応援してくれる、ミッションを体現しているという点でもとても魅力的なのです。これからどうぞよろしくお願いいたします!

#1:willにまつわるギャップ

さて、そんな私ですが、これまでの新規事業支援の経験知や、ビジネススクールでの気づきや学びを勝手ながらシェアする場として、コラムを書いていくことにしました。

私の担当してきたお客様は、新規事業を会社の中で立ち上げたり、社員から手を挙げてもらう仕組みを企画している方が多いのですが、

「うちの社員は、”これをやってみたい””あれに挑戦してみたい”というwillがない。」
「社員はただ毎日目の前の業務に必死になっているだけ」
「応援する仕組みを作ったところでうまくいかない」

そんな声を多く聞いてきました。
これは、果たして本当なのでしょうか。

一方で社員の方に話を聞くと、
「何か新しいことをやりたいと思っても、自信はない」
「今の仕事とは違うことにチャレンジしたくても、周りの先輩を見るとまだ先かな」
「会社の中に挑戦する仕組みはあるが、上司が応援してくれない」

そんな声が聞こえてきます。
このギャップはなんでしょうか。

さて、willの日本語訳を改めて調べてみると、意志、決意、決心、意欲や、望み・願い、気持ち・意向といった意味を持ちます。何かをやる、やりたい、こうありたい、といった気持ちなんですね。

社員の方の話から窺い知れるのは、このwillというものは、それぞれに存在しているということです。でも、仕組みを創っている方の話を聞くと、このwillが彼らには見えていないのだと感じます。

個々の中に多かれ少なかれwillはあり、表現したいと思っているけれど、実態はうまくいかない。

このギャップの理由としては、業態や企業規模、理念や制度など、さまざまあると思いますが、海外との考え方・文化の違いに目を向けてみるとどうでしょうか。

#2:会社の中でwillを出せない理由

海外、特に日本に近いアジアの国籍の人と今後のキャリアの築き方について会話をしていると、会社に期待するよりも先に、自分がどうしたいか、何を実現したいか、を第一軸に考えているように感じます。

自分のスキルアップにつながるのは何か、そのためのキャリアはどこにあるのか、を考えているのです。そして、そのために必要な主張をはっきりとします。現時点でスキルがあっても、なくても。企業に自分が合うのか、ではなく、自分に企業が合っているか、という視点を持っている印象があります。

以下の調査では、タイ、インド、中国(大陸)、インドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピン、ベトナム国籍の社会人が、働く企業に求めるものとしての結果を表していますが、個人に関わる項目が上位にきているのがわかります。

<会社を選ぶときに大事にしている項目に関する調査>

出所:早稲田大学トランスナショナルHR研究所

海外では、自分の意思・willを持つ、自己主張することが自然なのです。
これには、文化的な背景もあるでしょう。

例えば中国は、土地が広大で、さまざまな民族が住んでおり、気候も住む場所によって大きく異なります。一つの国の中に複数の国が存在しているような感覚です。その地で生き抜くためには、自分を知ってもらう、ストレートにわかりやすく相手に伝える、というのが当たり前になってくるのです。

でも、日本は、小さな島国で、土地による大きな習慣の違いがあるわけではなく、「察しの文化」と言われるほど、なんとなく相手が考えていることがわかりますよね。そうすると、直接的な表現を避け、周囲の様子を伺い、先読みして行動を起こすわけです。

会社の中で上司にキャリアについて相談する時、会社の制度や同僚の動きが気になって本心は言わないでおく、なんてことはありませんでしたか?

同じく日本人である私は、ビジネススクールの講座でシンガポールに行った際に、中国・香港の友人に、「空気を読むって、一体なんの意味があるの??だから日本で働きたくないのよ」と言われて、ハッとしました。

実際に、日本企業で働くことのチャレンジに関する調査として、言語の次に閉鎖的な雰囲気が挙げられており、特に若い世代(Gen Z:20-25歳)ではその傾向が強く出ています。

<日本企業で働くことのチャレンジについての調査>

出所:早稲田大学トランスナショナルHR研究所

こうした日本のこれまでの文化・習慣から、自分の想いを持っているけれどそれを外に出して伝える、willはあるけれど周囲に発信する、ということが難しくなっているのかもしれないなあと、感じるわけです。そしてその習性が、海外からの視点では、大きな違和感となって見えているのです。

#3:willを育むために必要なこと

では、「周りを気にせずにさあ今からwillを伝えなさい!」といったところで、日本では難しいのはお分かりですよね。

雇用の仕組みも、ジョブ型ではなくメンバーシップ型であり、人に仕事が割り振られる限りは、異動や転勤も必要となり、自分の意思に反することも受け入れていく必要があります。

ただ、だからと言って、このままでいいのでしょうか。海外から、日本の雰囲気は合わない!働きたくない!と言われるような国であっていいのでしょうか。日本がもっと魅力的になり、世界に価値を発揮していくためには、まずは一人一人の中にあるwillを、少しずつでも、表現していくことがやはり大事なのだと思います。

私自身の話になりますが、willを育むために、自分のキャリアや人生にとって何が大事で何が必要かを常に考えるようにしています。そして、それに必要な道を選択していくのです。正解がなく不安になることもあるけれど、やってみないとわからない、やってみてまた考えよう、という気持ちを持つようにしています。

実際に、新卒時代にwillを育ませて(〇〇の仕事をやってみたい、〇〇の役割にチャレンジしたいという意思表示)うまくいかなかったことが沢山あります。それでも、出してみたことで、得られたチャンスがありました。市場に出た時に、その経験を評価されることもありました。

今、ビジネススクールに通いながらmichinaruで新しいキャリアを築いていくという両利きのチャレンジも、迷いながらも一歩踏み出してみた、ただそれだけです。それでも、自分をもっと魅力ある人材に育て、お客様の役に立つ存在になりたいと願っています。

自分なりのwillの育み方を、見つけられるといいですよね。

◾️プロフィール
岡部 菜津子 Natsuko Okabe
慶應義塾大学卒業後、新卒でリンクアンドモチベーションに入社。人事として採用育成業務に従事。その後NTTグループの新卒採用立ち上げを担い、2017年にビザスクに転職。多くの大手企業を対象に新規事業の伴走支援を担い、制度設計から事業プランのサポート、ワークショップの企画運営など幅広く行う。2024年michinaruにジョイン。現在は、ビジネススクールに通いながらクライアンパートナーとして事業創造の現場を支援。自らも両利きのキャリアを実践する