COLUMNSコラム

事業創り 人創り 仕組み創り

1万人も社員がいるのに良いアイデアが出てこないと悩むあなたへ

2023.01.24

皆さん、こんにちは。michinaruの横山です。

本日より、新企画がスタートします!

題して、「michinaru横山のお話があります」シリーズ。成熟企業の新規事業創造にまつわるお困りごとを抱える皆様のまるで隣に座ってお喋りするように、課題を紐解くヒントや糸口を一緒に探っていければと思います。

初回のお悩みは、先日とあるお客様とのミーティングで出た「1万人も2万人も社員がいれば良い事業アイデアのひとつやふたつ出てもいいのに、全然出てこない」というお悩みです。

現在その会社さんでは役員がアイデアコンテストに期待を注いでいるそうですが、その期待に応えられるようなアイデアは出てこず、アイデアコンテストの度に「これだからうちの社員は…」とがっかりされてしまい、どうしたものかと思案している、とのこと。

コンテスト事務局としてはトップにやる気のあるうちにきらりと光るめぼしいアイデアを上げたいが、集まってくるアイデアは3秒で書いたようなポッと出のアイデアや突飛なアイデアばかり。それでも出してくれるだけマシで、大多数の社員は業務に忙しく、評価に直結するわけではない新規アイデア提案には反応してくれない。事務局側のヤキモキが募る…、そんな光景が目に浮かぶようです。

いやー、あるあるですよね。このご担当者さんだけでなく、社員規模こそ違えど皆さんも同じような課題を抱えているのではないでしょうか。

そんなお悩みを抱えたあなたのもとに、ドアノック。

\「トントン!お話しがあります!」/

早速お話しさせてください。

良い事業アイデアをたくさん生み出し育てるための「3つのセオリー」

今日は、企業内で社員から良い事業アイデアをたくさん生み出し育てようとする際に押さえておきたい「3つのセオリー」をお話しさせてほしいと思います。

『センス』より『お作法』

まず一つ目のセオリーは、アイデアを生み出すのに必要なものは『センス』ではなく『お作法』なんです。

先述のトップは「1万人も2万人も社員がいれば良いアイデアのひとつやふたつ出てきてもいいだろう」と述べておられました。センスもあって意欲もある、そんな社員は確率論的に現れるだろう、という前提が感じられませんか。

確かに「アイデアマン」という言葉があるように面白いアイデアを着想することが好きな人というのは存在します。ただし、そうした人が企業内での事業アイデアで良いアイデアを提案できるかというと必ずしもそうではないでしょう。突飛なアイデアを出すことはあっても、的を得た事業アイデアであるかは疑問です。

良いアイデアを生み出すのに必要なもの、それは「センス」ではなく「お作法」なのです。

企業内における良い事業アイデアを考えてみると「目新しければなんでも良い」というものではなく、今後事業として成立し得るアイデアである必要があります。「センス」に裏打ちされた奇想天外な閃きよりも、事業成立の要件にあった「お作法」のもとに発想されたアイデアの方が多少粗削りでも「もっと議論してみたい」と思わせる種が潜んでいる確率が高まるでしょう。

「我々が解くべき課題は何なのか?」「具体的には誰のどんな不なのか?」「どんな風にその課題を解決するのか?」「すでにあるサービスとの違いは何なのか?」ーそうした問いにひとつひとつ向き合いながら組み立てていくことで、個人の資質に依存せずとも良い事業アイデアに近づけていくことができます。

裏を返すと、上記のお作法を身に着けた人の割合が組織の臨界点を超えてくると、組織的なお作法となることによって自然と良いアイデアの出現確率が高まってくると考えられます。新サービスや機能を提案する際に課題や顧客価値起点のPR/FAQを書くというAmazonの仕組みも参考になりますね。

フェーズごとに基準は変わる

二つ目のセオリーは、”アイデアの良し悪し”はフェーズごとに基準を変えることです。前述のお客様の場合、トップは「独自性があって事業性が高くて今すぐ始められる事業アイデア」を求めていると仰られました。

当然企業で行う新規事業は慈善事業ではないので収益性や勝ち筋を求めることは重要なことですが、初期段階でその基準に耐えうるアイデアは世界中を見渡しても残念なことにほぼ例がないと考えておいたほうが良いと思います。

ここで大切なことは、アイデアの良し悪しを考える際に、フェーズで分けて基準を設定することです。いわゆるステージゲートと呼ばれるものですが、アイデアの初期フェーズには独自性や収益性ではなく、課題設定の良し悪しや解決アイデアの妥当性を見る。そこを通過したアイデアは、収益モデルやリソース活用度を見る。というようにフェーズごとに基準の難易度を高めていくのです。

小学生の子に大学受験の問題を求めても解けないのは当然です。まず小学生のうちに身に着けるべき読み書き算盤がしっかりクリアできているか?といったように基準を明確に「分けて」、アイデアの良し悪しをジャッジすることが重要です。

私たちが上手いなーと思う事務局の方々は、各フェーズ分けとそのゴール基準を明快に切り分けたうえで、ジャッジを担当する経営幹部陣に合意を求め、見どころのあるアイデアが潰されるのを回避されています。

こうしたボトムアップ的な事業創造の取り組みにおいて、ステージゲートづくりによってしかるべきアイデアがきちんと残る仕組みを創ることは成否の鍵を握ります。事務局特権の使いどころですね。

良いアイデアは磨くもの

三つ目のセオリーは、”良いアイデア”は突然生まれるものではなく、磨くものなんです。

先ほどの人間の成長段階で例えるなら、小学校、中学校、高校生、、と年齢に応じて、成熟度を重ねていきます。体格も見違えるくらい大きくなっていくでしょう。同じようにアイデアもフェーズに応じて磨かれていくものだと捉えることを忘れずにいてほしいと思います。

初期フェーズのゴール基準を満たして次のフェーズに移るときには、次のフェーズのゴール基準は満たしていないでしょう。まだ取り組んでいないから当然と言えば当然なのですが、この前提を持っているかどうかで最終段階でのアイデアのクオリティは大きく変わってきます。

では、フェーズごとの基準さえあればアイデアは磨かれていくのでしょうか?事業化に資するアイデアへとフェーズを順調にクリアさせていくために、「明確な基準」以外に重要なことが二つあることもお伝えしておきたいと思います。

良いアイデアへと磨き上げるために欠かせない「情熱」と「伴走」

それは、「アイデア起案者本人の情熱」と「支援者の伴走」です。

ステージゲートはひとつの仕掛けですが、必須業務ではない新規事業アイデアの磨き込みを実現するために、アイデアを次のフェーズへと移行させるために、起案者本人の「このアイデアを何としてでも事業化したい」という情熱が欠かせません。課題に対する当事者性の高さ、自身の価値観との重なり、内発的動機からの挑戦への疼きがなければ、アイデアを磨き上げようという原動力が枯渇してしまいます。

同時に、支援者の伴走も重要です。私はステージゲート自体が「門番」であると同時に「促進剤」として機能することが理想だと考えていますが、それは挑戦者とともに課題に向き合い、本人以上にそのアイデアの可能性を信じてくれる支援者の存在があればこそ。アイデアコンテスト事務局の皆様がそうした支援者の帽子をかぶり、上層部と調整しながら第二の起案者として挑戦者の背中を後押しすることで今まで以上にステージゲートを歩むひとつひとつのアイデアに魂が宿るのではないかと思います。

あ、もうこんな時間。随分長居してしまいましたね。

「”良いアイデア”についての3つのセオリー」いかがだったでしょうか。皆さんの感想をお聞かせいただければ嬉しいです。

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