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この春、新規事業チームへの異動に戸惑うあなたへ

2023.03.23

皆さん、こんにちは。michinaruの横山です。

本日も、成熟企業の新規事業創造にまつわるお困りごとを抱える皆様のまるで隣に座ってお喋りするように、課題を紐解くヒントや糸口を一緒に探りあてるためのコラム、「michinaru横山のお話があります」をお届けします。

いやー桜も満開、正真正銘の春が来ましたね。大人の春と言えば異動の季節。内示の噂に気もそぞろ、なんて皆さんもいるかもしれません。

今日は、この春、新規事業チームへの異動の内示を受けた皆さんに向けて書きたいと思います。(もしお近くにそんな方がいらしたらこのコラムを転送していただけると嬉しいです!)

「この春、新規事業チームへの異動に戸惑うあなたへ」

実はかくいう私も前職時代新規事業チームへの異動を経験した一人です。異動を告げられたときの私の胸中は一言で言うと「晴天の霹靂」(笑)。「新しい領域も立ち上げのフェーズも面白そう」というワクワクする気持ちの半面、「新規事業なんてやったこともないのに自分にできるだろうか」という未知の世界への不安が忙しく同居していたことを思い出します。(もと居た部署で活躍されていた方であれば、「せっかく今までの分野で自分を高めてきたのに…」と梯子を外されたような残念さがにじみ出る方もいるでしょう)

そうして4月を迎えいよいよ本格的に新規事業の業務を始めると、もうひとつの戸惑いを経験することになる方も多いのではないでしょうか。今までの職場に「当たり前」にあったものがまるでなく手探りの連続(マニュアルがないのはもちろんのこと、顧客も売り物も、なんだったら方針もない状態に戸惑った話もよく聞きます)。私自身も大変恥ずかしながら、それまでの職場環境との違いを受け入れ自分なりに仕事の進め方を掴むまでに半年以上はかかったように思います。

そこで。

そんな戸惑いを抱えたあなたのもとに、ドアノック。

\「トントン!お話しがあります!」/

早速お話しさせてください。

まずお伝えしたいことは、戸惑いは当然の現象だということ。予期せぬ異動、しかもこれまでの仕事の進め方が通用しない環境に飛び込むときに戸惑わない人はいないでしょう。ブリッジズはキャリア理論「トランジションモデル」で、転機に際して人は「終焉(終わりが始まり)→ニュートラルゾーン(喪失を受け入れ変化を乗り越え)→開始(新たに始まる)」というステップを踏むと提唱しました。異動を告げられ、慌ただしく体は新天地に身を移したとしても、名実ともにそれに適応するには、自ら変化を受け入れるニュートラルゾーンで一定期間を過ごす必要があるのだということをぜひ覚えておいてほしいと思います。

同時に、この春、新規事業チームに異動するあなたが安心して変化に向き合い、そしてスムーズにニュートラルゾーンを抜けるために、「新規事業チームに異動したらまず取り組んでほしい3つのこと」をお伝えさせてください。

まず一つ目は、「“新規事業”という土地を知ること」です。

人間誰しも、土地勘のない不案内な場所では不安を感じるものです。初めて行く場所で、言葉も通じず、道も分からず、顔見知りも少ない。そんな場所で「オラ、ワクワクすっぞ!」と言えるのは悟空くらいでしょう。

そこで異動後まず取り組んでほしいことは、“新規事業”という始めて足を踏み入れる土地をよく知ることです。新しい土地に早くなじむための極意は食わず嫌いで敬遠したり見下したりせずに、その土地に好奇心を持ち、そこでの暮らし心地を感じてみること。これまでの土地と様子の異なる、新規事業の土地ならではの文化や人をよく観察してみてください。

・新規事業チームではどんな言葉が行き交っているか?

・ここで大切にされている仕事の進め方はどんなものか?

・ここでは誰が何に喜び、誰が何に憤っているか?

・どんな苦労が存在するか?それは何によって引き起こされているか?

続いて、新規事業チームの住人になる自分にも問いを向けてみます。

・既存事業に最適化してキャリアを積んできた自分がハマるかもしれない罠は何か?

・自身がアンラーン(学習棄却・再学習)すべきことは何だろうか?

・自分自身が人生やキャリアで大切にしたいものは何か?その中で、新規事業への挑戦はどんな意味を持つか?

これから身を置く新規事業という土地について理解が深まってくると、そこでの暮らしもイメージがしやすくなるでしょう。

さらに新規事業という土地の成り立ちや歩き方をさらにありありと理解したい方は以下の書籍を頭に入れておかれることもお勧めします。

 「両利きの経営(増補改訂版)ー「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く

 「新規事業の実践論 (NewsPicksパブリッシング)

二つ目は「とことん足を運び、打席に立つこと」です。

あなたが推進する新規事業のステージが「0-1」だったとしても「1-10」「10-100」だったとしてもやるべきことは変わりません。

まずは、「自分たちが手掛ける新規事業は誰のどんな課題を解決するのか?」

この問いに対してシャープに、そして熱量高く語れる状態になるまで顧客のもとに足を運ぶこと、これを必ずやってほしいのです。

どこかで聞いたような絵空事の羅列ではなく、「この人の抱えるこんな切実な課題を解決するための事業だ」と言い切れるまで、人に会い、実在する課題に向き合い言葉にすることで、個人もチームも新規事業に取り組む熱量が高まるでしょう。新規事業の正解は机上にはありません、迷ったら顧客のもとにとことん足を運んでください。

また、「この事業を必ず成功させたい」という使命感は持ちながらも、「失敗して当たり前」という軽やかさも持っていてほしいなと思います。そもそも、新規事業はセンミツ(千のアイデアを生んで成功するのはせいぜい3つ程度、という意味)と言われる世界。ホームランを打ちたいがあまりバッターボックスに入るのを遅らせる慎重な姿勢でいても結局多くの打者は空振りしてしまうのです。

むしろ、不完全でも準備不足でもできるだけ早く打席に立ち、空振りしてもその失敗から学び、次のアイデアに早く繋げる「Fail fast,Learn a lot」の姿勢こそが新規事業の成果に繋がるでしょう。このスタイルの転換は最初は難しいかもしれませんが、まずは訪れた打席には必ず立つことから初めてみてください。

三つ目は、「自社を知ること」です。

新規事業に邁進しようとコミットメントが高まってくると、自社の保守的な文化や口は出すが手は出さない(ように見える)経営陣に批判的な気持ちが芽生えてくることがあります。「うちの会社では斬新なアイデアなんて理解されない」「どうせあの人たちは新規事業なんてやったことないからな」と愚痴のひとつやふたつ言いたくなるときもあるでしょう。

ですが、ネガティブな感情が脳内に固定化してしまうことでかえって自身の活動の足かせになってしまうことも少なくありません。せっかく新規事業チームに身を置くことになったのですから、それを役得として、自社の歴史をとことん紐解いてみてください。調べてみると、案外チャレンジングな創業秘話があったり、エポックな研究開発を手掛けていたことが分かることもよくあります。当時かかわっていた人を訪ねて直接話を聞くと、思いもよらぬ自社の側面が見えてきて見直した、なんて話もよく聞きます。

今の自社を率いている経営陣や自部門のリーダーとの対話機会も新規事業活動にかこつけてたくさん創るといいでしょう。「この会社をどこへ導きたいのか」「経営をしていて葛藤をしていることは何か」「新規事業は自社にとってどんな意味を持つか」をまっさらな気持ちでぜひ聴いてみてください。(新規事業チームであることをちょっと特権的に使ってみると、案外あっさりと時間をもらえると多くの新規事業パーソンが言っています)

自社の文化や経営陣を「敵」にしてしまわず、関係性をうまく築きながら、自社にとっての新規事業の文脈を創るヒント(ときに水戸黄門の印籠的存在にも)にしてほしいと思います。

最後にお伝えしたいことは、新規事業を創るという行為は望むと望まざるとにかかわらず、自身の生き方に大きなインパクトをもたらしてくれる唯一無二の経験になるということです。とことん非効率でとことん泥臭く、自らを丸ごと使ってゼロから何かを生み出すこの経験は、より個々人のアイデンティティーが問われる人生100年時代にあなたのキャリアの扉を開く大きな宝になってくれるはずです。ぜひ、ご一緒に新規事業の道を歩みましょう!

あ、もうこんな時間。やっぱり随分長居してしまいました。

いかがだったでしょうか。

このコラムを読んで、「新規事業って最高の仕事じゃないか!」と思ってくださる方が1人でもいてくださることを妄想して筆を置きます。あなたのご感想をお寄せいただければ嬉しいです。