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組織を動かすことに疲れ始めたあなたへ

2023.02.08

皆さん、こんにちは。michinaruの横山です。

前回からスタートした新企画、「michinaru横山のお話があります」シリーズ。

成熟企業の新規事業創造にまつわるお困りごとを抱える皆様のまるで隣に座ってお喋りするように、課題を紐解くヒントや糸口を一緒に探りあてるためのコラムです。

今回は、「組織を動かすことに疲れ始めたあなたへ」と題してお届けします。

時は2月。一筋縄ではいかない成熟企業の事業創造に携わってきた方にとって、一年を振り返りまた新たな年度を展望するタイミングが訪れています。

この一年を振り返れば、「事業を生み出す」ことにコミットすればするほど、「組織を動かす」ことにも向き合わざるを得なかった、という方も多くいらっしゃることでしょう。思うように動いてくれない組織に疲れ始めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんなお悩みを抱えたあなたのもとに、ドアノック。

\「トントン!お話しがあります!」/

早速お話しさせてください。

組織を動かすときに必ず起こる「バックラッシュ」

まず、「バックラッシュ」という現象をご存知ですか。直訳すると「揺り戻し」。組織を動かそうとして今までと違う取り組みを行った際、一定期間の中で必ず起こる、もとに戻ろうとする揺り戻しの現象のことを指す言葉です。

例えば女性の管理職を増やそうとして登用制度などを見直した場合、ポジティブな反応が見える一方で、ネガティブな反応も必ず起こります。不利益を被る男性社員やその上司からの反論・指摘の声に加えて、女性本人からの特別扱いされて迷惑だという声が徐々に徐々に露わになって聞こえてくるでしょう。こうした声に後押しされ、本来狙っていた制度変更の成果が出るまで待てずにもとに戻そうとする重力が日に日に強まってしまう。こうしたバックラッシュ現象は組織のいたるところで起こっています。

今日の「お話しがあります!」では、「組織を動かそうとするときにつきものであるバックラッシュとの付き合い方」をお伝えできたらと思います。

バックラッシュとの付き合い方

事業創造界隈の中でも、経営陣が中期ビジョン等で「両利きの経営」「新規事業戦略」を打ち出し、その命を受けた新規事業推進室が大小さまざまな仕掛けによって全社を対象に体質変革を促進する場合も多いでしょう。

大方針に反対する声は出ないのですが、アイデアコンテストへの送りこみや現場のエース社員の異動といった各論に対してはネガティブな反応が立ち現れます。さらに進んで、各部ごとの新規事業創出義務付けや1-10フェーズ以降の投資判断等の局面になってくると、指揮を執っていたはずの幹部でさえ梯子を外すような態度が見え隠れします。当然そんな雰囲気の中でアイデアコンテストには質も量も充実せず、学びたい人に機会を提供したいと思って開く勉強会でさえも思うように人が集まらない・・・。

そんな絵に描いたような「バックラッシュ」を食らって心が荒まない人はいないですよね。「なんで私がこんな目に・・・」「この会社にとって必要なことをやってるはずなのに・・・」「もういいかな・・・」。気持ちは揺らいでしまいます。

こうした組織を動かすことに疲れ始めている方にお話ししたいことがあります。

それは、まず「バックラッシュがつきものであることを覚えておいてほしい」ということ。組織が1つの生き物であるとしたとき、その生き物は絶えず振り子を振りながら安定を保っています。左に大きく振れると、次に必ず右に大きく振れる。これは自然の摂理です。新たな取り組みを始める際、バックラッシュはあって当然だと思えると、良いも悪いもなく、ご自身が仕掛けたことのインパクトがそうした形で現れているだけだ、と冷静に受け止められるのではないでしょうか。

同時に、バックラッシュで押し寄せる「フィードバックは宝」ということもあわせてお伝えしたいと思います。どうしても私たちはネガティブなフィードバックから目を背けたくなります。直接的な対立による心理的な消耗を避けるためですが、対立の出現こそ新たな調和に向けたエネルギーになります。(「善の研究」で有名な哲学者 西田幾太郎は「対立は最も美しい調和の種である」と言っています)

「フィードバックは宝」を実践するためには、ネガティブな声の持ち主のもとに足を運び、その言葉の裏側にある真意に耳を傾けます。多くの場合、単なる不平不満や自分勝手な主義主張ではなく、なにか大切なものを守るためにメッセージを発してくれています。ここではできるだけ自分自身の感情をいったん脇に置いて、その人は何を教えてくれようとしているのか憑依するように感じ取ってみてください。

自らの視点で施策を立案することに集中してしまって、欠けていた視点に気づくかもしれません。対立を超えた統合のヒントが浮かび上がってくるような感覚になればしめたものです。

そして重ねて、「組織を動かす取り組みをしている自分たちの譲れない軸はなにか」と改めて自分たちに問いかけてみてください。バックラッシュも浴びて、それでも自分たちが貫きたいものがクリアになると、次の振り子のエネルギーがさらに純度の高いものになるでしょう。

純度の高さが組織を動かす

ある大手企業の歴史的な人事制度刷新のときのこと。その会社では、人事制度刷新の説明会のあと、社歴や役職を問わず不満・不安の声を持つ社員一人ひとりと面談の機会を設けました。

部長以下人事メンバー総出で一つ一つの声に真摯に向き合い、抜け落ちていた視点についてはより良い制度運用へと修正を約束しながらも、制度変更の核としたコンセプト部分については「この改訂は、経営・人事が何度も議論を行い、未来の自社と社員のために120%でコミットしたものなので理解してください」と毅然とした態度で対応したとのこと。この人事の対応には現場サイドからもリスペクトの声が上がったそうです。

ここまでの純度で研ぎ澄ませると、それは自ずと共感を呼び、組織を動かす核となるのだろうと思います。純度の高さは局地戦でこそその価値が明らかになりますね。

あ、もうこんな時間。随分長居してしまいました。

最後に、組織を動かすことに疲れ始めたあなたに。いろいろ言いましたが、最後は笑いとばして仲間とともに信じる道を邁進してほしいと思います。「組織」という存在は途方もなくめんどくさく、私たちを絶望に追い込みますが、時として驚くほどにあっさり変わります。そんな転換点づくりにお悩みの皆様、いつでもお声がけください。組織でしか味わえない達成感や見ることのできない景色をともに目指せたらと思います。

「組織を動かそうとするときにつきものであるバックラッシュとの付き合い方」、いかがだったでしょうか。皆さんの感想をお聞かせいただければ嬉しいです。

コラム-資料DL