「ゼロ・トゥ・ワン」から学ぶ〜スケールする事業を生み出すための3つの教え〜
michinaru株式会社で学生インターンをしている若林です。
「変化を起こす挑戦者を創る」というミッションの元、新規事業を生み出す人や組織づくりについて日々勉強をしています。
今週は『「ゼロ・トゥ・ワン」〜君はゼロから何を生み出せるか〜 ピーターティール 著』を読みました。
著者の ピーターティール は1998年にPayPalを共同創業して会長兼CEOに就任し、2002年に15億ドルでeBayに売却。その後も情報解析サービスのパランティアを共同創業したほか、Facebook初の外部投資家となるなど、シリコンバレーでも現在もっとも注目される起業家、投資家の一人です。
そんな彼の尖った視点やノウハウが書かれている、とても刺激的な本でした。
この記事では、スケールする新規事業を生み出す時に大切な考え方は何か?という視点で重要だと思った3つのポイントを紹介していきたいと思います。
1.競争ではなく独占を目指すべきである
「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」これはティールが採用面接で必ず訊く質問だそうです。この逆説的な質問をビジネスに当てはめると「誰も築いていない、価値のある企業とはどんな企業だろう?」となります。そして、ティールはこのような企業こそが長期的に利益を生み出せていると主張します。
では、誰も築いていない、価値のある企業はどのような企業なのでしょうか?
それは成功例をコピーする企業ではなく、0から1を生み出す企業だと言います。水平的進歩ではなく垂直的進歩を生み出す企業のことです。
1台のタイプライターから同じものを100台創りような企業ではなく、タイプライターからワープロを創るような企業こそが長期的に利益を生み出せているのだそうです。
このように、この本ではビジネスにおいて競争が重視されていることを批判し、他者の誰もがやったことの無いビジネスを立ち上げ独占をすることが成功につながる。と一貫して主張されていました。
シリコンバレーの第一線で活躍してきたティールが、現代のビジネスシーンの競争を否定しているのはとても興味深いです。
独占企業として、グーグルやアップルを例に挙げ、「誰も築いていない、価値ある企業」であった。と述べています。
(以下書籍から引用)
– クリエイティブな独占企業は、消費者を他の企業から奪い取るのではなく、全く新しい潤沢な領域を生み出すことで、消費者により多くの選択肢を与えている。だからこそ、クリエイティブな独占は社会に役立つだけではなく、良い社会を作る強力な原動力になっている。
似たようなビジネスモデルを立ち上げ競争をし勝ち抜くことを目指すのではなく、今まで存在なかった市場、つまり0から1を生み出すことで独占を目指すべきである。-
実際に水平的進歩を生み出した企業が独占を築き上げ、成功していることも、ティールの主張が正しいことを証明していますよね。
しかし、ではなぜ多くのビジネスシーンにおいて、競争の必要性が正当化され、当たり前に行うべきものとして捉えられているのでしょうか?
その問いに対してティールは「競争とはイデオロギーなのだ」と答えています。
教育システムでは、学生の競争力を成績ではっきりと評価し、最も成績のいい生徒はステータスと信任を得る。個人の才能や思考に関係なく、全員に同じ教科を同じように教える。じっと机についているのが苦手な生徒は劣等感を覚え、テストや宿題に秀でた子どもは現実からかけ離れた学校という狭い世界でアイデンティティを確立することになる。
このように、長い時間をかけて同じ土俵で競争をさせられることで私たちは競争は正しいもので必要なものだ。と考えるようになる。
本書の場合は、アメリカのことを述べていますが日本でも同じような状態が起きていますよね。だからこそ、その「競争はするべきものだ」という価値観に自覚的になり、新規事業を考えることで、他の人とは違うアイデアを生み出すことができるようになるのではないでしょうか。
2.あいまいな楽観主義から抜け出す
彼は人の未来に対する考え方は以下の4つに分けられると主張しています。
あいまいな悲観主義は、避けようのない衰退がいつ起きるかを知ることもできず、暗い未来を予想している考え方のことです。
あいまいな悲観主義は1970年代のはじめからずっと、方向性の定まらない官僚制度に流されてきたヨーロッパの人に多く見られるとティールは言います。
ヨーロッパ人は問題が起きてからしか対応せず、ことが悪化しないようにただ祈るだけだからだそうです。
明確な悲観主義は、未来を知ることは可能だと思っていて、かつその未来が暗いために備えが必要だという考え方です。
中国人がはっきりとした悲観主義者の代表だそうです。明確な悲観主義者の多い中国は、自分たちは遅れていて欧米に追いつかなければいけないと強く願っているために、欧米でうまくいったことをコピーして急速に成長しています。
明確な楽観主義は、自らの計画と努力によって、より良い未来が訪れると信じている考え方です。
17世紀から1960年代までは、明確な楽観主義者たちが欧米を率いていたと言います。明確な楽観主義者だからこそ、人々は大胆な計画を歓迎し、実行できるかどうかを検討していました。
実際、この時期には巨大ダムを造る計画やNASAではアポロ計画が始まるなど科学者やエンジニア、ビジネスマンがかつてないほど、世界を豊かにしていました。
そしてあいまいな楽観主義とは具体的な計画を持つことなく未来が良くなることを期待している考え方のことを意味しています。
1982年以降の右肩上がりの発展を当たり前に享受してきた世代はあいまいな楽観主義を持つようになった。そして、現代のアメリカ人の心をこのあいまいな楽観主義が占めているとティールは主張しています。
あいまいな楽観主義が社会に広まったことで、金融や政治、哲学といった、場面で長期的かつ具体的なビジョンを持たない動きが見られるといいます。短期的であいまいな考え方だけでは、目の前のニーズに完璧に応えられることが出来ても、0から1を生み出すことは出来ない。
あいまいな楽観主義者が起業をするということは、成功を実現するための計画がないのに、成功をさせようとしているのと同じだ。成功させるためには、あいまいな楽観主義ではなく、明確な楽観主義となり自らの計画と努力によって、より良い未来が訪れると信じる必要がある。
とティールは主張しています。
「偶然」なんとなく成功することを期待するのではなく、具体的に自分の思い描いた成功を掴みに行く姿勢の大切さに気づかせてもらいました。
3.隠れた真実の存在に気づくこと
優秀な起業家は他の人が知らない真実の周りに偉大な企業が築かれることを知っている。と本書では述べてあります。
Airbnbは「旅行者はホテルに高い部屋代を払う以外にほとんどの選択がなく、不動産所有者は空き部屋を信頼できる相手に簡単に貸し出すことが出来ない」という、隠れた真実を見つけた。だからこそ、未開拓の需要と供給に気づいたのだと。
確かに、このように言われると成功をしているビジネスは人々の隠れた真実を明らかにしていると言うことができます。今となっては、当たり前に利用されている、TwitterやUberもこれらの一例だとしています。
では、隠れた真実を見つけるためにはどのようにすれば良いのでしょうか?
それは隠れた真実の存在を信じ、ほかの誰も見ていない場所を探すことだと言います。
学校教育で多くのことを教わり、インターネットを使えばどんなことでも調べられる現代において、私たちはまだ発見されていない真実は無い、もしくは隠れた真実はあっても自分には到底見つけられるものでは無いと考えてしまいがちです。
しかし、現実には隠れた真実はまだまだ数多く存在しており、誰もが発見するチャンスを持っています。
学校教育の目的は社会全般に受け入れられた知識を教えることです。であれば、学校では教わらない重要な領域が存在するだろうか?と問うことが、隠れた真実につながるかもしれません。
また、目の前にいる人や自分の中にも今まで軽視されてきた隠れた真実が多く潜んでいます。そして、その真実を見つけるのには学歴や年齢は全く関係ありません。
人々があまり語ろうとしていないことは何か?禁忌やタブーはなんだろう?と問うことが隠れた真実につながるかもしれません。
世の中は未知のものに溢れていて、その発見をするチャンスは誰にでもある。と考えることは非常にワクワクしますよね。
その視点は簡単に身につけられるものでは無いかもしれませんが、未知のものを探す姿勢を持ち続けることで、社会を前に進める事業のチャンスを見つけるきっかけを多く持つことが出来るのではないでしょうか。
『「ゼロ・トゥ・ワン」〜君はゼロから何を生み出せるか〜』を読んでみて
最後まで読んでいただきありがとうござます。『「ゼロ・トゥ・ワン」〜君はゼロから何を生み出せるか〜』を読んでみて、スケールする新規事業を生み出すために重要な
1.競争ではなく独占を目指すべきである
2.あいまいな楽観主義から抜け出す
3.隠れた真実の存在に気づくこと
という3つの考え方を紹介させていただきました。
ティールの主張はシリコンバレーから世界を変えるような大きな企業を生みだすことに照準を絞って語られているため、読者の方が共感できない部分も多いかもしれません。
ただ、彼の尖った視点から放たれる言葉は日常生活を何気なく過ごしていく中で、知らぬ間に刷り込まれている偏った考え方に気づかせてくれるものばかりでした。
自分のやりたいこと、実現したい未来に向かって、自分にしか持てない視点や手法を使って計画的に行動していく。競争ではなく、異なることを目指す。
そうすることで誰もが自分らしく、その人にしか出来ない社会との関わり方を見つけることが出来そうですよね。