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「掛け声はかかれど挑戦風土は道半ば…」と悩むあなたへ

2023.03.08

皆さん、こんにちは。michinaruの横山です。

本日も、成熟企業の新規事業創造にまつわるお困りごとを抱える皆様のまるで隣に座ってお喋りするように、課題を紐解くヒントや糸口を一緒に探りあてるためのコラム、「michinaru横山のお話があります」をお届けします。

今回は、「掛け声はかかれど挑戦風土は道半ば…と悩むあなたへ」と題してお届けします。

つい先日、とある成熟企業の事業リーダーから年度末を前にして喜びのメールをいただきました。

年度開始当初には営業部長である自分さえ到底ムリだと思っていた高い営業目標をクリアできたこと、それには年度の前半に部長課長チームの「ガチ対話」によって挑戦のための関係性を構築できたことが大きかったこと、それが土台となって係・課を超えた助け合いが次々に生み出され、商談の角度と進度が飛躍的に上がったこと、などが綴られていました。

そして、文末には、「長くサラリーマン人生をやっていますが、こんなに背中を預け合って仕事をし、感動的な勝ちを味わえたチームは他にありません。若手からベテランまで誰一人取り残すことなく、挑戦の果実を一緒に分かち合えたことが嬉しくて仕方ないです」と添えられていました。

対話がもたらした挑戦のための関係性

私たちmichinaruはこのチームの皆さんの対話にほんの少しかかわらせていただいていたのですが、まさかここまでの成果をたたき出すチームになっておられたとは。まさに、「成果の質」を変えたければ「関係の質」にリーチすることからと唱えるダニエルキム教授の成功循環モデルの通り、部課長チームの背中を預け合う関係性が部署全体を支える安心感につながり、メンバーの自発的挑戦行動が連鎖的に起こり、誰もが諦めかけたチャレンジングな目標を見事達成したという嬉しいご連絡でした。

挑戦風土を阻む保守的風土

この、「ひとりひとりの挑戦が促せる風土づくり」は、多くの成熟企業が今まさに取り組んでいる課題でもあるでしょう。各社が対外的に出している中計等にも「Change」「Challenge」の文字が並びます。しかしながら、長年培ってきた保守的な風土が足かせになって、「掛け声はかかれど、挑戦風土は道半ば…。もっともっとアグレッシブに変革を図っていきたいのだが…」というリーダーの切実な悩みの声も多く耳にします。

そこで。

そんなお悩みを抱えたあなたのもとに、ドアノック。

\「トントン!お話しがあります!」/

早速お話しさせてください。

人間は変わらないことをよしとする生き物

まず、挑戦風土を考える際に、皆さんと共有しておきたいことがあります。それは、「Changeだ」「Challengeだ」と掛け声はかかるものの、笛吹けど踊らず。一向に社員の行動は変わらない、という状態は、ある意味では「正常」だということです。

そもそも人間は挑戦を好む生き物ではありません。挑戦とは、「戦いに挑む」「難敵に立ち向かう」ことを意味しますが、それは生存本能に逆らう行為でもあります。現状維持バイアスという言葉がある通り、人は生来変わらないことをよしとする、言い換えればコンフォートゾーンに居続けるようにプログラミングされているのです。

挑戦行動を生み出す3つの要件「安心・理由・モメンタム」

今日は、ひとりひとりの社員が大小さまざまな挑戦行動を積み重ね、またそれを促す挑戦風土へと有機的に繋がっていくために抑えたい3つの要件についてお伝えしたいと思います。

企業ごとに課題の深刻度合いはバラツキがあって当然ですので、自社の挑戦行動を増やすためのチェックポイントとして読んでみてください。

挑戦行動を起こす要件① 挑戦のセーフティネットはあるか?

まず皆様にぜひお伝えしたいのが、「挑戦と安心はセット」だということです。人間の防衛本能が挑戦を恐れるからこそ、挑戦の土台として安心は必要条件です。

皆さんの職場は「挑戦しても大丈夫だ」「失敗しても自分には居場所がある」「防御線をはらずに話せる人がたくさんいる」と感じられる状態にあるでしょうか。同時に、「自分の挑戦は応援されている」と思わせられているでしょうか。

先の素晴らしい営業組織を作られた部長は、「このチームでは安心して挑戦できた」と語っています。それは、自分が戦いに出ても背中を預けている課長陣が留守を守ってくれる、ボロボロになって戻ってきてもこのチームでは称賛されるという安心感があったからこそだと述べられていました。

DeNAの南場会長は「挑戦者はプレミア」と語り、挑戦の経験自体を高く買い、失敗してもさらに大きなチャンスを与えることを繰り返し語っておられます。失敗を許容することと、挑戦を評価することは、似て非なるものである。このあたりに学ぶべきヒントがあるように感じます。

挑戦行動を起こす要件② 挑戦の理由はあるか?

戦いに挑む、難敵に立ち向かうという挑戦行動は、危険に身をさらす行為だということを念頭に置くと、それでも挑戦したいと思うに足る「動機」が必要です。みすみすコンフォートゾーンを出てチャレンジゾーンに入ってまで、自社のメンバーは挑戦する理由を持っているでしょうか?

「このままでは会社がやばい」 「非連続の成果を出さねば評価が落ちる」といった危機感からの理由では長続きしません。かと言って、会社のビジョンやミッションを付け焼刃的に復唱させたからと言って心の底からの理由にはなりにくいでしょう。

挑戦の理由として最もパワフルなのは、自分だからこそ/自社だからこそ解決せねばならないと思える課題を見つけることです。具体的に顔が浮かぶ・自分しか知らない・自社や自分の意義に重なる課題を見つけられたら、「私が・私たちがやらねば」と強い原動力になるでしょう。

そうした想いを育むために欠かせないのは、机上の上での分析ごっこではなく、一見無駄にも思えるような「行動」だということも知っておいてほしいと思います。はじめは半信半疑の足取りでも、行動を重ねるうちにオフィスにいては見えてこなかった課題が見えてきて、様々な一次情報に触れる中で有機的に繋がるように立体構造化してきます。

これを繰り返すことで、「この人を救いたい」「この不を放っておけない」「私たちがやらねば」と課題が自分ごと化され、リスクを取ってでも挑戦する動機に火がついていきます。挑戦者の覚醒は行動から起きる、は古今東西の真実でしょう。

あ、いけませんね。ついつい熱くなってしまいました。三つ目は短くお伝えしますね。

挑戦行動を起こす要件③ 背中を押すモメンタムは流れているか?

最後のチェックポイントは、挑戦の理由はおぼろげに湧いてきた、セーフティネットも感じられている。そんな「心の中で半分手を挙げている人」に一歩踏み出す背中を押すモメンタムは組織に流れているかということです。ノリ、や、勢い、と言い換えてもいいかもしれません。

かつて、日産自動車のCMで「やっちゃえNISSAN」というフレーズがありましたが、まさにあれは顧客に向けての宣誓という形で、日産社内に向けて「やっちゃえよ」とメッセージするものだったのかなと思います。

SONYでは「(不幸にして上司に恵まれなかったときは)机の下で黙ってものをつくれ」と唱えられてきたと言いますし、最近では重たい組織の代表格に挙げられる日系メーカーでも「許可より謝罪(許可を取るのに力を尽くすくらいなら、やっちゃって謝ろうぜ)」というフレーズが流行っていると聞きます。

皆さんの職場でも、「えいやっ」と自分の意思でチャレンジゾーンに飛び込もうかと迷ったときに後押ししてくれる流行り言葉をぜひ仕掛けてみてください。ポスター等で頭に刷り込むこともベタながら有効かもしれません。

あ、もうこんな時間。やっぱり随分長居してしまいました。

いかがだったでしょうか。

今日は自社に挑戦風土を根付かせ、メンバーのイキイキとした挑戦行動が溢れる会社を創りたいリーダーに向けてお話ししてみました。少しでもヒントがあれば嬉しいです。ご感想をぜひお寄せ下さい。