事業アイデアを生む2種類の問い
アイデアは問いに対するアンサーとして生まれてくる
新規事業を考える際、「さあどんな事業を立ち上げようか」と事業アイデアの検討から入る会社が多いのではないかと思います。
全社員にアイデア発想の門戸をひらく新事業提案制度の形を取ることもあれば、新規事業プロジェクトチーム内での協議の形を取ることもありますが、いずれにしても、事業アイデアがないところに新事業は立ち上がりません。
しかし、アイデアなんていくらでも出るだろう、と思って取り組みを始めたものの、ありきたりなアイデアしか出てこず、早々につまづくケースもよく耳にします。
なぜでしょうか。
斬新なアイデアを生み出すセンスやスキルが足りないからでしょうか。
私たちは、良いアイデアが生み出せないのは、アイデアを考える際の「問い」に問題があるのではないかと考えています。
熱心に海外の先行事例をインプットしたり、多様な人を集めてブレインストーミングをしても、「問い」がなくては、方向性がフラフラするばかりです。
つい忘れがちなことですが、アイデアは問いに対するアンサーとして生まれてくるのです。
今日は、事業アイデアを生み出す二種類の問いを考えます。
(1) 問題解決を促す問い
事業アイデアを生む1つ目の問いは、「どのようにしたら~できるだろう?」です。
・どのようにしたら家に居ながらにして美味しいコーヒーが飲めるだろう?
・どのようにしたらリモートワークでもチームワークばっちりなチームが創れるだろう?
・どのようにしたら今度のマラソン大会で学年1位が取れるだろう?
これは、すでに顕在化(意識化)している問題を解決するための問いです。
「どのようにしたらもっと家の掃除が楽になるだろう?」
という問いに対して生まれたのが、お掃除ロボットというアイデアなのだと思います。
そして、お掃除ロボットの後に水拭きロボットが現れたように、良い問いのもとには次々とユーザーの声が集まり、具現化したいアイデアが沸いてきます。
あらかじめ決まっている領域で事業創りをする場合や、立ち上がっている事業やサービスでさらなる改善を目指す場合に、この問いは威力を発揮します。
「どのようにしたら~できるだろう?」
これは、自分たちが解くべき問題を明確化しその解決へと向かわせる、問題解決を促す問いなのです。
(2) 妄想を促す問い
そして、もう1つは、「もしAがBならどうだろうか?」の問いです。
「もし世界が100人の村だったら」
という書籍もありましたが、この問いの構文にはコツがあります。
常識の逆を想像するのです。
「世界の人口は70億人。が、世界をたった100人の村だとすると、どうなるだろうか?」
という具合です。
例えば、以前にご紹介した食べチョクの場合だと、
「農家は一般的に儲からないものだと言われている。
が、もしも農家のこだわりが正当に評価される世の中になったらどうなるだろうか?」
といった問いがあったのではないでしょうか。
「大切な商談はFace to faceでやるべきだと思われている。
が、もしもビデオ通信で息遣いまで聞こえるような会話ができたらどうなるだろうか?」
これに本気で取り組んだのがZoomの創業者エリック・ヤン氏です。
SkypeやFacetimeが先行するビデオ通信の圧倒的後発でありながら、この問いが大躍進を支えたのではないでしょうか。
「もしAがBならどうだろうか?」
この問いは、世の中の常識を疑い、当たり前を逆手に取る、妄想を促す問いなのです。
事業アイデアを生む2種類の問い
前述の問題解決を促す問いより、妄想を促す問いの方が難しいと感じた方が多いかもしれません。
わたしたちは社会人人生の中で問題解決思考を鍛えてきていますが、妄想力を鍛える教育は受けてきていません。
また、自分自身の「当たり前」ほど疑うことが難しいものです。
ですが、人々の価値観が大きく移り変わる時代において価値あるアイデアを生み出すためにはこの妄想こそ欠かせないのではないか、と考えます。
皆さんはどんな問いを持っていますか。
どんな妄想に駆り立てられますか。