WORKS事例紹介

挑戦する人づくり,挑戦と応援の仕掛けづくり
五十鈴株式会社

経営者と新規事業推進室長 二人三脚で進める成熟企業の事業創造

正式名称
五十鈴流SX(I-Society X)事業創造プロジェクト
課題
全グループ現場社員の新規事業創造への参画機会提供による裾野拡張
出島型ではない現場を巻き込んだ新規事業開発のプロセスづくり
サポート
事業創造ワークショップ 21-23年度
 ①Willから始まる事業創造ワークショップ Hatch!
 ②出発点は現場の「不」 事業アイデアワークショップ Hatch! Reframe
 ③アイデア磨き上げセッション Hatch! Agile
 ④経営ピッチおよび幹部ミーティングを含む社内コミュニケーション支援
結果
経営ピッチに繋がる事業創造ワークショップの複線化による、挑戦メンバーおよび提案される事業アイデアの多様化
経営との対話を通した五十鈴流 事業創造のゴールイメージの明確化

1952年の設立以来、鉄鋼メーカー、商社、自動車関連等のお客さまと共に、時代の先駆者として鋼板流通ビジネスにイノベーションを起こしてきた五十鈴株式会社。2021年からは、新たな10年ビジョン「I-Society X」を始動させ、未来社会に向けて、これまでのケイパビリティを拡大し、多種多様なパートナーと共に「未来社会創造企業」としての挑戦を続けています。今回、先のビジョン実現に向けて、同社の新規事業創造をリードするお二方に、新規事業に取り組む意義や事業創造において大切にしていることについてお話を伺いました。

<お話をお伺いした皆さま>
五十鈴株式会社 代表取締役社長 鈴木 勝様 (上記写真 右から2番目)
大学卒業後、2000年に日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。 本店勤務を経て2010年に韓国・ソウル支店へ異動・駐在。日本帰国後、営業次長を経て同行を退職。 2020年4月 五十鈴株式会社に入社し、執行役員に。同年10月、五十鈴中央副社長を兼任、22年4月 代表取締役社長執行役員(CEO)に就任。今年で3年目を迎える。

五十鈴ビジネスサポート株式会社 常務取締役 朝岡 睦騎様 (上記写真 左から2番目)
大学卒業後、2002年に五十鈴株式会社に入社。三菱商事やメタルワンからの商社受託業務を経験。五十鈴関東に異動し、営業および新規事業開発に従事後、23年度より五十鈴株式会社 事業企画・開発チームの部長として本社勤務。24年からは、五十鈴ビジネスサポートの常務取締役となり同グループの新規事業開発をリードする。

社員 一人ひとりの挑戦が五十鈴の進化と成長のエンジンと語る鈴木CEO
事業創造において大切にしてきたこと

自分たちが掲げたビジョンに正真正銘向き合う社員を増やす

横山:貴社の新規事業のこれまでの歩みや取り組みについてお伺いできるとのこと、楽しみにしてきました。貴社の事業創造において、大切にされてきたことや印象的だったことはありますか。

鈴木:現在、新たな価値を創造し続ける企業体への変化・挑戦を掲げ、さまざまな取り組みを進めています。主力事業である鉄鋼流通事業を活かした、会社としての新たな収益の柱をつくることはもちろん、何よりも世の中に必要な存在であり続けるために新規事業の取り組みはとても大切だと考えています。まだ道半ばですが、幹部メンバーと1年ほどかけて構想した2030年ビジョンにもその想いや具体的な取り組み内容を盛り込むなどして、歩みを進めています。

朝岡:一つ目のターニングポイントとなったのが、2020年のスタートアップ委員会の発足です。それまで一拠点での活動だった新規事業を全社横断の活動へと位置づけました。全社のリソースに横ぐしを通し、横断的な取り組みとすることで、会社として新規事業に本気で取り組んでいくという社員へのメッセージにもなったと思っています。

鈴木:私が社長に就任する以前から、ビジネスパートナーの方々との協業により新たな価値づくりに挑戦するなど、すでに事業創造の素地があったと思います。これらの機運をさらに大きくしていくために、仕組みや枠組みが窮屈ということがあれば、それ自体もすぐに見直そう、と考えています。朝岡が上下左右、さまざまな関係者と丁寧にコミュニケーションを紡いでくれていることで、新規事業に対する社員や幹部の意識、雰囲気も少しずつ変わってきていることを感じています。

一人ひとりの夢を共に実現しようとする仲間やチャレンジできる環境が五十鈴にはあると語る朝岡氏
事業創造におけるターニングポイント

「50個の事業、50人の経営者を育む」という方針・メッセージ

横山:初めて鈴木さんお会いした際に、「五十鈴には会社にぶら下がろうと思っている社員は一人もいない」とおっしゃられていたのがとても印象的でした。社長が社員を誰よりも信頼している、これも新規事業に取り組む上での貴社の大きなリソースだと思います。他に、事業創造における印象的な出来事やターニングポイントはありましたか。

朝岡:昨年はじめ、ミチナルさんとの対話の中で、鈴木がお話しした「新規事業創造の取り組みを通じて50個の事業・50人の経営者をつくろう」という五十鈴ならではのゴールイメージは、私も含めて社員みんなのマインド・チェンジにつながったと思います。

鈴木:張り切っている現場の社員も多いよね。少しずつ挑戦をしたいと思う社員も増えてきているんじゃないかな。これは私の信念でもありますが、何よりも社員の可能性を信じるということが大事だと思っています。社員一人ひとりの夢や挑戦を最大限に引き出せる会社でありたいし、それをみんなの力で実現する「みんなの夢をみんなで自己実現する」そんな会社になりたい。そのためにも、現場の社員の声を積極的に引き出し、耳を傾けることが大切だと思っています。

横山:素晴らしいです。社員の挑戦を促す上で、効果的だった施策やアクションはありますか。

朝岡:現場社員と鈴木のホットラインができたことは、これまでとの大きな変化です。自分のことを社長が知ってくれている。今の言葉でいえば、心理的安全性でしょうか。上下の関係がうまくいっている時はいいですが、そうでない時は、相談できるというセーフティーネットが重要だと思います。

事業創造を進める上でのポイント

臨界点を超えるまでやり続ける根気。分かりやすい変化と成果を出す

菊池:新規事業文脈ではいかがですか。

朝岡:まだ成功パターンとまでは言い切れませんが、この3年間で事業創造ワークショップに参加した社員の総数は3倍になりました。組織における臨界点を超えるまで続けることも大切なのではと思います。これからの私の課題の一つは、現場で力を持て余したり、くすぶっている社員に興味を持ってもらい、掬い上げて、新規事業の取り組みにも参加してもらうことです。

鈴木:事業創造の裾野を広げていくためにもわかりやすい成果が出てくるといいよね。現場の叩き上げから執行役になっている幹部がいるように、自分の発案した事業アイデアから事業を立ち上げて、あっという間に社長になっちゃうみたいな。

朝岡:そうですね。私も分かりやすい変化や成果を出すことが一番の加速材料になると思っています。いつでも会社にできるという事業が出てくれば、社員ももっと手をあげやすくなるんじゃないかと。

僕たちはバッテリーと語る二人は、インタビュー中も終始笑顔
経営者と事業創造リーダーの関係性

僕らはバッテリー。同じ志のもとお互いの強みを活かし、インパクトを最大化する

横山:改めて貴社で新規事業をやる意義、理由について教えてください。

鈴木:「世のため」この一言に尽きるね。

朝岡:私の視点から言えば、「会社のビジョン実現」。正真正銘、ビジョンに向かって参画する社員を増やしていくことが使命だと思っています。

菊池:当面の課題についてはいかがですか。

鈴木:兎にも角にも成果を出すこと。

横山:そのために必要なことはどんなことでしょうか。

鈴木:事業リーダーたちの「責任と裁量」でしょうね。事業にするためにはいくら必要なんだ?その分いくらにできるんだ?と。お財布も含めた裁量と責任をセットで渡して、任せる。それがなければ、知らず知らずのうちに決裁した意思決定者への言い訳や甘えが出てしまいます。

横山:決裁を握られていることは、不自由なようで自由。自ら裁量を持つことは、結果責任から逃れられないということなんですね。

世の中にとって、会社にとって、正しいと思うことをこれからも

菊池:お二人は、経営と新規事業リーダー(責任者)は、どんな関係が理想だと思いますか。

鈴木:お互いの持っている強みをリスペクトして、活かしあうこと。でも志は一緒ということかな。違うからこそシナジーが生まれるんだよね。

朝岡:違う角度や視点で見つつも、感覚はフィットしている。そういう意味では、スピード感も重要な要素の一つかなと思います。新しいことを進める時にこそ、進め方の個性が出るなと。私の場合は、動きながら考えようというタイプ。完璧にマーケティングリサーチをしてから進めようと言われたら辛い。そういった意味でもやりながらお互いのフィットする感覚をチューニングしていくことが大切だと思います。

菊池:絶大なる信頼関係を感じました。

鈴木:野球で言えば、バッテリー。僕は、高校時代キャッチャーだったんですけど、ピッチャーにどれだけ気持ちよく投げてもらうかをよく考えていました。要は、朝岡をはじめ、社員みんなが腕まくりをしていっちょ頑張るか!という気持ちや環境を作れるか、なのかもしれません。

朝岡:僕は、高校時代はサッカーに心血を注いでいました。自分が変だなと思うことや納得いかないことは、どんどん変えていくタイプ。1年生だからって全員が玉拾いしなくたっていいわけです。無思考で前例踏襲をしない、世の中にとって、会社にとって、正しいと思うことをやりたい。組織の新陳代謝もはかりながら、50個 50人の起業家と事業を育てられるように引き続き進めていきたいと思います。

菊池・横山:本日は、貴重なお話、本当にありがとうございました。

担当からの声
「出島型ではない、全グループ現場社員巻込み型の新規事業創造」という難易度の高い課題に挑む五十鈴株式会社様。本格的に取り組みを開始されてからの3年間、どんな困難や変化があったのか。その変革を牽引する若き経営者と新規事業推進室長にお話しを伺いました。

新規事業創出において経営と新規事業推進者との関係性は、事業創造の成否を握る重要な鍵のひとつだと考えています。この3年間で築き上げた二人の関係性を、鈴木社長は「お互いの強みをリスペクトし、活かしあう志を共にしたバッテリー」と称してくださいました。その強い信頼関係は、お二人の楽しそうに談笑される姿からも伝わるのではないでしょうか。

自分たちの手で創ったビジョンの実現に向けて、王道を突き進むお二人の揺らぎのない自信も随所に感じたインタビュー。私たちが尊敬してやまないお二人にこうして伴走させていただける幸せを感じつつ、さらなる貢献を胸に誓った貴重な機会でした。
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