WORKS事例紹介

挑戦する人づくり,挑戦と応援の仕掛けづくり
アトムメディカル株式会社

3年間探求し続けたアトム流の人材と採用のあり方
 成果は組織の土台とチームの成長

写真左からmichinaru横山、アトムメディカル株式会社 須田様、michinaru菊池
正式名称
新卒・営業職採用の新たな勝ちパターンを確立するコンサルティングセッション
課題
活躍人材を再定義と出会い方のリ・デザイン
欲しい人材が興味を抱く魅力の再発掘
サポート
自社独自の採用戦略を描くコンサルティングセッション(20年卒採用~22年卒採用)
結果
①総合職として活躍する新たな人材要件とペルソナ像の設計
②ペルソナと出会うための「学祭採用」という新たな採用ルートの確立
③採用チームの視座と経験値のアップ

「え、こんな感じ?」 違和感から始まった挑戦

菊池)3年前(2018年)に我々が主催した採用セミナーにお越し頂きましたね。当時は採用活動に対して、どんな課題をお持ちだったのですか。

 

須田さん)アトムメディカル(以下アトム)に中途入社して数年経った頃でした。当時の課題は、将来のマネジメント人材候補を新卒採用の中で採用していきたいと考えていましたが、それに相応しい人材に出会えなかったことでした。特に文系の学生にとって医療機器メーカーという業界は馴染みが薄く、営業職を志望する人が少なかったのです。医療系の中でも弊社の事業領域である「周産期医療」に関心を持つ学生はさらに少ないのですよね。

 

菊池) それまではどのような採用活動をされていたのですか?

 

須田さん)私がアトムに入社する前は、新卒採用活動の多くの業務をアウトソーシング会社に頼っていました。採用担当者も専任はおらず、採用ノウハウが蓄積されていませんでした。そんな中で採用を行うにしても、たくさん集めてふるいにかける採用ではなく、理想としては『10人集めて10人採る』採用を目指したいと思っていました。

 

ですから、菊池さんの話をセミナーで聞いたときに、やろうとしていたことと親和性を感じて、納得した記憶がありますね。


アトムメディカル株式会社 人事企画課 課長 須田智徳様

菊池)当時、技術職採用の勝ちパターンは見えたけども、営業職採用の勝ちパターンを模索したいとおっしゃっていましたね。

 

須田さん)そうですね。一般的には機電系の学生採るのは大変だと聞いていたのですが、医療機器の開発という仕事を国内でできる会社は少ないため、採用は上手くいきました。

 

ところが営業職については応募はいただけるのですが、当社が求める人材と応募いただく学生にギャップがありました。医療系を志望する方々はサポーティブな志向の方が多く、営業タイプとはちょっと違う印象で、大変失礼ない言い方をすると「え、こんな感じ?」という違和感を感じていました。機電系よりもむしろ営業系の学生を採る方が難しいと感じていました。

営業職ではなく総合職を採る
人事からのプッシュアップ

菊池)なるほど、営業職の採用が課題となったところで、我々に声をかけてくださったのですね。

 

須田さん)そうですね。営業職採用の勝ちパターンを確立したいと思っていました。

 

菊池)まず、一緒に取り組んだのが、新卒採用を通じて実現したいことは何か。採用に取り組む理由(採用のWHY)を言語化することでした。

 

須田さん)私が入社したその年に、経営も代替わりをしたタイミングでした。そして、次のアトムの方向性を示す「アトム3.0」というキーワードが新社長から出てきました。

 

菊池)次なる会社の方向性に基づき、未来の組織や事業の姿、そして求められる人材像を話し合いましたね。一方で、現場ではどのような人材が求められているかについても話を聞かせてもらいました。現場の管理職の方々や現場のハイパフォーマーと言われる方にも。

 

そうした素材を元に話し合う中で、新卒採用において「営業職を採るのではなく総合職を採る」と定義したことが印象的でした。

 

須田さん)これからの組織を考えたとき、営業職だけで固定化するのではなく、他部門での活躍も視野に入れた人材を採用していこうと考えました。これにより人材要件もこれまでから大きく見直されたと思います。

たどり着いたのは学祭委員経験というペルソナ

菊池)これまでの営業職の採用ではどんな人材を採っていたのですか?

 

須田さん)明確に言語化はできていませんでしたが、現場でお客様から気に入られるような「かわいげのある人」でしょうか。

 

菊池)なるほど。それが営業職から総合職にシフトしたときに、人材要件を描き直しました。そして、その人材要件に近い人物を若手社員からピックアップしてもらったのですが、その時の選定基準を教えてください。

 

須田さん)「将来、他部門に異動しても活躍できる人」と定義した時に、感覚的に動いている人材より、言語化が上手だったり、構造化が得意な人材が活躍するイメージがありました。そういった視点から選んだのが若手社員のAさんです。

 

横山)Aさんはもちろん営業として人柄が良いですが、まだ若手ということもあって、営業現場の一番のハイパフォーマーというわけではなかったようですね。ただ、彼の上司はAさんを評価しており、パワーポイントを使った資料化が上手いとおっしゃっていたことが印象的でした。言い換えると言語化力や構造化力が高かったのでしょうね。

須田さん)営業の現場だけですと、論理的に物事を考えること以上に、「お客様から愛される」といった人柄的な側面が重視されていましたが、今回の人材要件はこのあたりが大きく変わった点だと思います。

 菊池)まさにアトム3.0に相応しい人材だと思いました。そして学生時代のAさんをペルソナ(理想のターゲット人物像)にして、彼のような人材に来てもらえるかを考えました。

 

横山)彼にインタビューしたときに、学生時代に学園祭実行委員の活動を頑張ったというエピソードを語ってくれていましたね。ただ、頑張っていたのにも関わらず、就活の場面ではあまり上手くPRできなかったと。

 

菊池)もしかすると、学園祭実行委員に取り組む学生も彼と同じことを悩んでいるのではないかと推測しました。確かに学園祭実行委員の活動をじっくり聞くと、仕事は多岐に渡り、社会でも通用しそうな経験が多く積めそうだと感じました。

その後、何名かの学園祭実行委員の学生を探してインタビューさせてもらい、アトムが定義した人材要件と合致していそうかを検証していきましたね。

須田さん)そうですね。ただ学園祭実行委員でだけでなくアトムの人材要件に近いスキルや特性を持っていそうなサークルなどをピックアップしましたよね。登山部、バンドマン、教員を希望していない教育学部の学生、など。

 

菊池)その中でも学園祭実行委員の学生たちは、一年目で仕事を覚え、二年目ではもうリーダーとなって一年生を従えて動かさなきゃいけない。スケジュールや後輩をマネジメントするという経験を積んでいることが分かりましたね。

 

須田さん)はい。私たちが総合職で採る人材の大事の要件のひとつはマネジメント力だと思います。そういうものを“プチ”経験している学園祭実行委員の学生はいいかもしれないと思いました。

 

菊池)そして「学祭採用」という新しい採用ルートを用意して、学園祭実行委員に限定したセミナーを開催しました。

学祭実行委員採用セミナーの告知チラシ

須田さん)そうですね。セミナーは想像以上に来てくれたという印象でした。

 

菊池)どういう風に集めましたか?

 

須田さん)大学の学園祭実行委員会のツイッターにDMを送ったり、学園祭実行委員会の事務局メールに直接連絡してみました。あとはオファーボックスからのスカウトですね。スカウトの返信率は恐ろしく高かったです。

 

菊池)たった一人に絞ったからこその効果でしたね。初年度は予想以上の進捗率で最終面接5人残って5人ともに内定が出ました。

 

須田さん)社長が5人全員来て欲しいと。また、社員よりプレゼンが上手いと言っていました(笑)。

Why Who How… 議論の過程でメンバーが育った

菊池)しかし初年度は内定承諾を得るまでが難しかったですね。

 

須田さん)元々は医療業界に興味がなかった学生をどうやって振り向かせるかは困難でした。

 

菊池)初年度の課題を教訓に改善を重ねながら、2年目、3年目と「学祭採用」に取り組んでいきました。3年目はついに採用チームを発足させて取り組みましたね。

 

須田さん)私が採用から少し距離を置き、若手のメンバーに採用を任せる体制を創ることができました。

 

菊池)チーム全員で7,8回ほどミーティングを重ねて採用戦略を練っていきましたね。初年度でなぜ採用するのか、誰を採用するのか、と言ったWHYやWHOを明確にしましたが、2年目3年目では、どうやって採用するのか、というHOWの部分に磨きをかけましたね。

 

須田さん)2年目、3年目はコロナ禍での採用活動でしたので、特に選考に参加する学生の志望意欲を高めることが困難になっていると感じていました。この「学祭採用」もフルオンラインでどのように行うのかにも思案しました。

 

コンサルティング初年度のミーティングの様子

菊池)コミュニケーションのコンセプトを明確に打ち出し、選考中で何を伝えるのか(採用のWHAT)というシナリオも詳細に話し合いました。最終面接以外はオンラインでのコミュニケーションを想定して設計しましたね。

 

須田さん)正直、この「学祭採用」はオンラインだったら厳しいかなと思っていたので、それが実現できたというのは大きかったです。

 

ただ、「学祭採用」に限ったことじゃないですけど、やはりここ数年ぐらいで学生がすごく変わったなと感じていて、何をやりたいかレベルで学生をマッチングすることは昔以上にハードルが上がっていると感じています。

 

一緒に採用に取り組んだチームも仮説を立てて挑んだからこそ、この難しさを肌感として分かってくれたと思います。 

菊池)一緒に取り組ませてもらった3年間の総括をしたいのですが、須田さんにとってどんな3年間でしたか。

 

須田さん)1つは自社が採るべき人材について、しっかりと議論できたことは大きかったですね。今回設定した人材像が正解だったかは数年経たないと分かりませんが、少なくとも仮説を持って採用に取り組めたことにすごく意味があったと思います。

 

また採用メンバーの経験値がアップしたと感じます。菊池さんや横山さんからアドバイスをもらい、一緒に創り上げていったことで、採用はこう考えてこうやればいい、ということが分かるようになってくれたと思います。

人に投資し続けて創ってきた土台と採用に対する意識の変化

菊池)ありがとうございます。須田さんご自身の変化などはありましたか。

 

須田さん)私の変化は、採用と育成のバランスについて具体的に考えるようになったことしょうか。かつてはどんな人材を採るかに拘りがあったと思います。ただ経営という視点から考えると、採用だけでなくその後の育成にもしっかりとパワーをかけていかなきゃいけない。そんな意識から「アトムスタンダード」という育成の仕組みを作り、機能するようになってきました。

 

横山)人へ投資してこられたからこその成果ですね。

 

須田さん)そうですね。そういった観点では長期目線でお互いミスマッチにならないように、人材のNG基準も明確にしようという話をしています。

 

横山)最初は、どんな人材ならアトムで活躍できるだろうというハテナの多いスタートラインだったのが、土台が出来上がってきたという感じがします。採用へのフォーカスで終わらず、その後の育成と活躍についても両輪で整えてこられたことが素晴らしいです。

 

菊池)コロナなどで採用活動は不確定要素の連続でしたが、一緒に大きな課題に向き合えたことは我々にとっても学びも多かったです。ありがとうございました。

担当からの声
多くの企業は「たくさん学生を集める」ことから新卒採用を考えてしまいがちです。たくさん集めた方が選択肢が増え、“優秀な“学生が獲得できる可能性が高まると考えるからです。しかしその結果「誰にとっても耳障りのいい訴求」をすることになり、誰の心にも深く刺ささりません。一方アトムメディカル様の採用戦略は「たった一人に絞る」ことで、欲しい人材の心を揺さぶることに成功した好例です。

また、たった一人に絞るために「誰がこれからのアトムに相応しいのか」という議論を通じて、採用チームだけでなく面接に関わる全ての人の視座を上げることに繋がったと感じています。

採用と育成の両方の長期的な視点を通じて描かれた人材戦略が、今後のアトム様の躍進に大きく貢献していることを信じてやみません。
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