横山)笠井さんにお会いしたのは約3年前。笠井さんがアイアクトの役員になられたタイミングでした。
笠井様)そうでしたね。もともと私は、アイアクトの親会社である博展でプランナー、クリエイティブ、事業企画、デジタル事業部門の責任者などをやってきました。その間博展がM&Aしたアイアクトをさらに伸ばそうということで役員に就任しました。
アイアクトに移ってしばらく経ったタイミングで横山さんとお会いしましたね。そのときの課題感は、どのようにアイアクトという会社をチームビルディングしていくかということでした。
横山)メンバーは中途中心、新卒採用はこれから力を入れる、というタイミングでしたね。
笠井様)はい。ちょうどアイアクトの主要メンバーの退職が続いた時期でもあり、組織の立て直しや文化づくりに力を入れたいと思っていたのです。組織的な課題に着手したいと思いながら、知見も経験もなく、どんなやり方があるのかも知らなかったので、当時横山さんに声をかけたのです。
横山)実際の取り組みとしては、2019年2月に実施した「ここで働く意味を語る全社員ワークショップ」からご一緒させていただきました。
笠井様)それが今は半年ごとの定例になったアイアクトキャンプの始まりでしたね。キャンプという名称は横山さんがつけてくれました。
横山)はい。日常とは違う、開放的な雰囲気のなか、焚火を囲むような対話の機会になるように、と思って、ネーミングしました。
アイアクトは自分の世界を持っている人たちが多い。そんな人たち同士が繋がるために、いきなりチームビルディングだとかビジョンづくりだとか形式ばった場にせず、まずはひとりひとりが自分を語るところから始めることが大事だろうと考えました。
笠井様)初回は「ひとりひとりがここで働く理由」をネタに話すことから始まり、「アイアクトらしさ」や「アイアクトが目指す世界」などテーマを変えながら対話を深めていきました。
横山)なぜキャンプを定例化したのでしょう?
笠井様)私は、アイアクトのプロパーではなく、外部から来たので、アイアクトの文化、つまりどんな人達がいて、何を目指していて、何に興味がある集団なのかを知らなかったのです。それを知らないと、組織づくりはできないと思っていたし、半年に一度集まってその時必要なテーマを皆で対話する、という取り組み自体に意味があると考えていました。
横山)なるほど。対話は文化を知るためでも文化を創るためでもあったのですね。
笠井様)キャンプが毎回大成功ということは全然なくて、今思うと初めは外側を撫でてた感じがしますね。本質まで入り込めなかったことも多いです。が、一度で辞めずに、場を創って、チャレンジして、反省して、を繰り返してきた結果、回を経て本質に近づいてきた感覚があります。
何より、キャンプで出てきたみんなの言葉を活かして、ミッションビジョンバリューを言語化したり、キャンプでの対話が様々なところに活かされ、今のアイアクトの形を創っています。
横山)コロナ禍の20年9月には初めてオンラインキャンプに踏み切りました。
笠井様)そうですね、最初は「リアルでできないなら(やる価値はない)」と見送っていたのですが、ある時点から「オンラインでもやっておきたい」と思いました。
横山)というのは?
笠井様)あのときは、組織全体がすごく悶々としていた時期で、「今為すべき事を成そう」という話をきちんとみんなと話しておきたかったのです。
「今」という時にフォーカスして、「お客様は今、何に困っているんだろう」「私たちは今、どう進化すべきなんだろう」ということを全社員で考えた場でした。幹部だけではなくみんなで話したことで、いろんなフレーズをもらったし、その後に続く対話のきっかけになりました。
横山)組織ではなく事業における提供価値に実践的に踏み込んだキャンプでした。私も大変印象に残っています。
横山)20年3月ころからコロナ禍に入り、リモートワークに切り替わり、そして景況にも変化がありました。どんな期間でしたか?
笠井様)コロナ禍に入り9か月ほど経った2020年の12月ころに圧倒的に反省したんですよ。業績が上がらない中で、悶々としていた期間が長かったですね。
主語の伴わない取り組みをしていたなと反省し、そこからは主語と行動を意識し始めました。「お客様が困っているところ」で動くことに私を含めた全リソースを投下することにコミットしました。
横山)コロナ禍での変化に、笠井さんはどんな難しさを感じていたのでしょう?
笠井様)コロナ禍以前は、メンバーの大半がオフィスにいて、様子が見えました。今思うと、「空気を感じて、手を打つ」が、自分のマネジメントスタイルだったんですよね。それがオフィスに特定の人しかいない環境になったとき、うまく適応できませんでした。
業績も上がらない、組織もピリピリしている、メンバーの不安が顕在化してきて全体のストレスがピークでした。でも自分としては、それを肌で感じられずいい手が打てない。オンライン禍で情報源も狭くなっていますしね。それが本当に難しかったです。
横山)同じ難しさを感じたリーダーは多いでしょうね。
笠井様)リモートワーク化・オンライン化で情報源が狭くなっているからこそ、空気を感じ取るアンテナは自分が動かないと取れません。適切な打ち手のためには、現場でお客様やメンバーと対話することでしか生まれないと実感しました。だからもっともっと行動数を増やそう、と大きく舵を切りました。
横山)そうした変化を経て、改めて今はどのように組織づくりをとらえていますか?
笠井様)これまでを振り返ると、私たちはとても対話をしてきたのだと思います。
アイアクトキャンプやリーダーシップダイアログを始める前はアイアクトという組織が掴めなかったのですが、今は40人全員のらしさや特性がわかりますし、ひとりひとりに期待できることを言語化できます。これが今後の土台になることは間違いありません。
以前、博展の社長の田口から、「笠井、いい会社をつくろうな」って言われたことがあったんです。その言葉は、自分がマネジメントや経営を担うようになって、いつも頭の中にありました。
私はプランナー出身なので、会社づくりというのは「側を創る」イメージがあったのですが、もっと具体で「価値を生み出す装置を創る」イメージに変化してきました。これから私が目指すのは、個の力を引き出し価値が最大化する「いいチーム」を創ることだととらえています。
横山)アイアクトは、ベテランのプロ人材と成長著しい若手人材がチームを構成しています。
笠井様)はい。人材が多様で個性豊かなメンバーが多いですね。共通するのは、創るプロセスの地道な業務をこだわりを持って進められるという点。創ることが好き、考えることが好きという彼らの資質はアイアクトの大きな財産です。個性や資質をさらに発揮できるチームを創りたいと考えています。
横山)ひとりひとりのリーダーシップへの期待が印象的です。
笠井様)今回人事制度もリニューアルしますが、これまでみんなと対話してきて、目指すべきもののための装置がやっと創れるようになった感覚があります。そうした装置を生かすためにも、「リーダーシップ」は間違いなくキーワードだと思っています。
横山)アイアクトの変化の起点を増やしたい、とよくおっしゃってますね。
笠井様)力強く人を牽引するようなステレオタイプのリーダー像である必要はない。メンバーの個性を活かして、アイアクトらしいリーダーシップのあり方をもっと顕在化させていきたいですね。
昨年10か月かけて実施したリーダーシップダイアログで横山さんが紹介してくれた「リーダーシップの三段階」のように、自分らしく自分を動かし、周囲に働きかけるリーダーが増えることで、いいチームが増えていきますから。
横山)これからのアイアクトにどんな展望を持たれていますか?
笠井様)私たちは「お客様と共に『Web力』で一歩先の豊かな体験をつくる」をミッションに掲げ、「お客様にとってコミュニケーション領域プロデュースでBEST1になる」ことを目指しています。
そのために、自身も、お客様も、市場も、プロデュースできる。そんな人と組織になろうとメンバーには伝えています。そういう存在ならお客様は頼りたくなりますから。
横山)お客様にとってBEST1でありたい、というこだわりを感じます。
笠井様)はい。お客様の近くで動き、より難しい課題がたくさんある場所を見つけたいですね。その場所で、お客様に代わって体験価値をプロデュースするためにはリーダーシップが必要です。
「プラスワン(+ONE)」の価値を提供し、お客様が最も困っている課題を解決できる、そんな会社になっていきたいと考えています。
菊池)最後に、2年程度伴走してきた横山はどんな存在ですか?
笠井様)うちには人事がいないので、アイアクトのHR担当ですよね、横山さんが。今も印象に残っているのは、まだお付き合い始めた頃、キックオフ用のスライド資料を見せたときに「この資料ではワクワクしないですよね」と言われたことです。忌憚のないボールが出せる人なんだなと。
私の立ち位置的にメンバーには言えないこともあるのですが、横山さんにはいろんな情報をお渡ししてきました。最初は壁打ちから始まって、長さが深さを生むお付き合いの形だと思っていますので、これからもよろしくお願いします。
横山)笠井さんが懐の深い方でよかったです(笑)これからもよろしくお願いします。今日はありがとうございました。
*上記のグループ構成、役職等は2021年3月の取材時点のものです。
2021年4月30日をもってアイアクトはインフォネットグループに入り、笠井様は代表取締役社長に就任されました。