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イントレプレナーの発掘とキャリア

2022.03.30

こんにちは。michinaruの横山です。

先日行ったセミナーにて、「イントレプレナー集団に変える3つの仕掛け」を皆さんと考えました。

イントレプレナー集団に変えていくためには、
① 創る人 ②支える人 ③支える組織 
この3つのテコへの様々な働きかけを紹介しました。

当然、3つそれぞれに適切な仕掛けが必要ですが、まず一丁目一番地として「創る人」本人がいないと始まりません。

企業さんの取り組みフェーズによっても異なりますが、どんなに堅い地盤であっても、自らの意思で事業をゼロから創る人、つまりイントレプレナー人材を育てたいという会社側の想いは日増しに大きくなっているように感じます。

今日は、多くの会社さまとの実践を通じて学ばせてもらったイントレプレナーの発掘とキャリアについて書いてみます。

「イントレプレナー人材」は後天的に開発可能

まずはじめに、イントレプレナーの資質は先天的に大きく差があるのでしょうか。

我々はイントレプレナーの資質は誰もが多かれ少なかれ持っていて、その開花に対して環境の影響が大きく出ていると感じます。

人はその場において何が歓迎されているかを敏感に察知する能力に長けています。

どんなにイントレプレナー「向き」の資質を持っている人でも、歓迎される環境でないと察するとその性質をひっこめることを学習します。

だからこそ、人の奥底に眠るイントレプレナー気質を呼び覚ます環境を用意することでイントレプレナー人材を後天的に育てることができる、と考えています。

イントレプレナーのファーストペンギンはどこにいるのか

では、十分に環境が整っていない、まだ地盤が固い段階でも、イントレプレナーを呼び覚ます呼びかけに最初に呼応してくれるファーストペンギンはどこにいるのでしょうか。

リクルートの新規事業提案制度Ringをリードする渋谷氏はこう表現します。

“たとえば授業中の教室に蝶々が入ってきて、みんなが集中している中で蝶々に興味を持てるのも才能ですよね。普通は「集中しなさい」って注意するところを、「よく気づいたね」と言ってあげることも大切だと思うんです。次々と新規事業が生まれてくるのは「リクルートだから」と言われることもありますが、子どものころに蝶々が気になっていた人はどの会社にもいると思います。大切なのは、その気づきを注意せず伸ばしてあげることです。すると世の中の“不”に気づいて事業にする人が増えてくるのではないでしょうか。“

この言葉を借りれば、イントレプレナーのファーストペンギンは、子どもの頃、「蝶々が気になっていた人」だということでしょう。

「蝶々が気になっていた人」って誰の中にも一定心当たりがあるのではないかと思います。ましてや特別な資質やスキルでもないことがわかります。

では、そんな人たちは皆さんの組織においてはどのあたりに多く生息していますか。

多くはメインストリームよりも、組織の周辺にいることが多いようです。

イントレプレナー人材は外との競争より新たな挑戦に動機づく

立教大学の田中聡氏の研究によると、イントレプレナー人材は達成・競争志向より学習・挑戦志向だと言います。

達成・競争に動機づかないため既存事業のわかりやすいハイパフォーマーではないけれども、外側の世の中の不に気づいていてウズウズしていたり、新たな挑戦に飢えていたり、今の仕事に飽きている人。

上司に忖度し評価を気にする内向き組織に嫌気がさしていて、本当に価値あるモノづくりにどっぷり取り組んでみたい人。

そんな人々がどんな組織の周辺にも必ず一定数潜んでいます。


こうした人たちを発掘することが、イントレプレナー集団に変わっていくための出発点です。

イントレプレナーのキャリアは「コネクティングドッツ型」

では、イントレプレナーを発掘し目覚めた後のキャリアはどのように考えておけばいいのでしょうか。

自らが立ち上げた事業を事業責任者としてずっと率いるというキャリアもあるでしょうし、新規事業創造を統括するリーダーへと昇りつめるキャリアも考えつきます。

ただ、新規事業創造は「センミツ」と呼ばれるように事業の大ヒットを経験できる人ばかりではありません。

また、ゼロイチが好きなイントレプレナーは1-10や10-100のフェーズが好きとは限りませんし、マネジメント志向が強くない方もいるでしょう。

私は、イントレプレナーのキャリアには「コネクティングドッツ型」をオススメします。

目の前のお題に夢中になって新しい人や課題に向き合って動いていった結果、後から振り返ると自然と点と点が繋がってオリジナルの道ができている、というキャリアの形です。

スティーブジョブズの学生時代のカリグラフィー授業の経験が、後のマッキントッシュの売りとなる美しいフォントが生まれた話は有名

これは、ジェラットの提唱する「積極的不確実性」というキャリア理論にも附合します。

未来のキャリアを確実にデザインすることは不可能で、自らのキャリアを組織任せにせず主体的に考える態度は大事にしながらも心や直感で決めた行動に後から意味がついてくる、ということだと言えます。

「コネクティングドッツ型キャリア」を実現するヒント

このコネクティングドッツ型キャリアを現実に実現する要素として3つ挙げられます。

① キャリアへの自律性(ジョブ選択を自らできる、展望をもとにした希望が出せる、など)


② 師の存在(内省を支えてくれるメンター)


③ ”組織的肯定”の風土(安心して挑戦できる組織の風土)


 ※組織的肯定(Institutional Yes)=Amazonが事業を生み出す組織であるために重要視している概念

とくに③は非常に重要で、安心して挑戦できる環境がなければ人はイントレプレナーとして生きる自信を無くしてしまいます。

新たな課題に対する挑戦には背中を押し、挑戦の末にたとえ失敗したとしても本気の失敗をたたえ、それを学びに変えると同時に、ネクストチャンスが与えられる。

リクルートもサイバーエージェントも、事業創造が上手い会社はこれを非常に上手に行っています。

「蝶々が気になっていた人」の資質を最大限発揮してもらうと同時に、息長くその存在を承認し、「ここでだからこそ」と選ばれるフィールドを提供することの可能性を感じてしまいます。

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最後までお読みいただき、ありがとうございます。

今日は、イントレプレナーの発掘とキャリアについて考えてきました。

多くの会社でイントレプレナー人材は望まれながらも、理解されず、なかなかその資質が活かせていない状況にあります。

みなさまの組織に潜んでいるイントレプレナーに光をあてるきっかけになれば幸いです。

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