新規事業提案制度を根付かせる3つの実践
こんにちは、michinaru菊池です。
先日michinaruラジオで、参考にしたい新規事業提案制度について話しました。(取り上げさせていただいたのは、リクルートさん、関西電力さん、森永製菓さん)
参考)michinaruラジオ「大手3社の新規事業提案制度を調べてみた」
改めてこうした事例を調べると、新規事業提案制度がしっかりと会社に根付いていることが分かります。
私たちも様々な制度設計に関わっている中で、「新規事業提案制度が活性化しない」「誰も手を挙げてくれない」という声を多く聞きます。
今回のコラムでは多くの会社から学ばせてもらった「新規事業提案制度を根付かせるために大切なこと」について書きたいと思います。
新規事業提案制度を設計している方や、運用している方、もっと新規事業提案制度を活性化させたいと思っている方に、新たな視点が提供できれば嬉しいです。
制度はメッセージ
まず、制度とは何でしょうか。
会社にはいくつもの制度が存在しています。人事評価制度や、福利厚生制度など。ここ最近では在宅勤務制度なども話題になることも多いです。
制度にはその会社の大切にしたい価値観や文化が反映します。
例えば、評価制度ひとつとっても成長挑戦を促したい会社と顧客満足を良しとする会社では違ってきますし、ワークライフバランスの実現が成果に繋がると考える会社では、福利厚生制度の充実に反映されます。
つまり、制度とは会社のメッセージを仕組みやルールにしたものと言えます。
まずは「制度とはメッセージ」ということが、制度を考える上での一丁目一番地だと私は思っています。
では、次に本題である「新規事業提案制度を根付かせていく上で大切なこと」について考えてみます。
WHYから始める
制度はメッセージであれば、新規事業提案制度にはどんなメッセージを乗せたらよいでしょうか。
「新規事業提案制度をスタートします」や「社員から新しい事業アイデアを募ります!」というメッセージではなく、「なぜ我が社はこの制度を導入するのか」といったWHYから始めるべきだと考えます。
ご存じのサイモンシネックさんが提唱する「ゴールデンサークル」でも、人を動かすコミュニケーションはWHATからでなく、WHYから始めることが鉄則と言われています。
参考)サイモンシネック「優れたリーダーはいかに行動を奮い起こさせるか」
私たちもこれに習うべきです。
ここでの大切な問いは、私たちはなぜ新規事業に取り組むのか、です。
私たちがなりたい、または創りたい未来の姿の実現でしょうか。
多くの会社は未来像をWHYのメッセージとすることが多いかもしれません。
一方、会社の創業期にもWHYを見つけることも出来ます。
どんな会社でも創業のタイミングは想いしかありませんでした。創業者がどんな想いで事業を創っていったのか。
こうしたエピソードを引用してメッセージを設計することもあります。
創業の想いからWHYのメッセージを創り上げることは効果的です。
既存事業を守る古参のメンバー達にとって、新規事業にお金と人を使うことを良しとしない人も多くいるのも事実。
彼らには未来を語るよりも、自分たちの原点を語る方が共感を呼びやすいものです。
社員に対してのコミュニケーションには必ずWHYから語ることを徹底しましょう。
手を変え、品を変え、しつこく
制度はメッセージですが、それが社員に届いていなければ存在していないことと同じです。
多くの社内制度は「そんな制度あるなんて知らなかった」と言われているものが多いのではないでしょうか。
ユニークな社内制度を多く生み出しているサイバーエージェントの曽山哲人さん(常務執行役員)は「制度は流行らせないと意味がない」と語ります。
会社として大切なメッセージを具現化した制度はあらゆる方法を使って伝えていくべきです。
キーワードは「手を変え、品を変え、しつこく」。
事業提案制度というメッセージを、「誰から(語り手)どんな風に(切り口)何を通じて(媒体)」届けるか、の3点から考えます。
ラジオでも紹介したリクルートさんでは、社内ポスターや外部の著名な起業家を呼んだトークライブなど、制度を流行らせるために様々な施策を取り入れています。
手を緩めず、これでもか、というぐらい発信してください。
挑戦の火を絶やさないバージョンアップ
様々な制度設計に関わってきた中で、一番の肝は何か?と問われると「運用」と答えます。
つまり制度を用意して終わりにしてはダメです。
新規事業提案制度は何もせずして、応募数は上がることはありません。
運用しながら少しつづバージョンアップしていくことが大切です。
双日さんの新事業提案制度「Hassojitz(ハッソージツ)PJ」はCMで耳にしたので存知の方も多いかと思いますが、HPを見るとこのプロジェクトも年々進化していたことが分かります。
ラジオで紹介した関西電力さんも、十数年前に作った事業提案制度を再度リニューアルして今のカタチになっています。
こうしてカスタマイズするのは、担当者の思いつきでできるものではありません。
そこで運用時に以下の点を抑えておくとよいカスタマイズに繋がると思います。
①応募と進捗の数字で細かくおさえる(事実データ)
②定期的に社員の声を拾いに行く(一次情報にあたる)
③1年に1回組織の変化をアンケートで取る(定点観測)
こうした情報に基づき行いたいのは「経営との対話」です。
そして、次年度は応募を増やすことだけでなく「リピート応募に着目」してください。
有名な話ですが、リクルートの新規事業提案制度「Ring」から生まれた「スタディサプリ」は、起案者である山口さんの6回目の挑戦から生まれた事業です。
つまり、挑戦者の心の火を絶やさないことが大切です。
それぞれの細かいポイントは、機会があれば別途コラムに書こうと思いますが、この運用を丁寧にできている会社さんは少ないです。立ち上げの数年間は、我々のような外部を上手に使いながら一緒に運用するが良いと思います。
挑戦の土壌を耕す
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
多くの会社にとって新規事業は生まれにくい宿命にあります。
これまでの既存事業に最適化した組織文化が新規事業の推進を妨げるからです。
私が考える新規事業提案制度の目的のひとつは、こうした土壌を変えていくことだと考えます。
失敗を許容しない堅実な組織の土壌を、新規事業提案制度を通じて挑戦土壌に変えていく。
そのためには、今回まとめた3つのことが実践できているかが大切です。
もう少しできることがありそうだな、と想われた方は今からでも取り入れてみてください。
私たちも制度設計といった箱づくりだけでなく、伴走して一緒に挑戦土壌を耕していくことをモットーにしているので、是非お気軽にお声がけください。