成功する事業に存在する「質の高い課題」とは何か
michinaruの横山です。
新規事業を創ろうとするとき、皆さんは何から着手しますか。
多くの新規事業創造の現場では、事業アイデアの検討から入るケースが多いようです。自社のリソースや市場の分析を行い、成功確率の高い事業アイデアを立案する。このようなプロセスを一度は経験した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
残念なことに、こうして生まれた事業アイデアの多くは日の目を見ることはありません。なぜなら事業創造において最も大切な観点が抜け落ちているからです。
■解決策の質より、課題の質
事業創造において最も大切な観点とは、「課題」の存在です。そもそも事業とは、世の中にある「課題」を解決するために行うものだからです。
スターバックスは、単に美味しいコーヒーが飲めるから人気になったのではなく、「家庭でも職場でもない第三の居場所がほしい」という課題を持った人たちに共感され、他のコーヒーチェーンとは異なる立ち位置・ブランドを築くことに成功しています。
私たちの提供している事業創造プログラムでは、成功する事業を創るうえで、「課題の解決策」を磨く前に、「課題の質」を十分に高めることが大切だと伝えています。
では、「質の高い課題」とは、どのようなものでしょうか。
今日は3つの条件を挙げて考えます。
1.解像度の高い課題であること
質の高い課題の条件の一つ目は、課題に対する解像度が高い状態であることです。
例えば、「今の世の中は教育格差があるね」とざっくり表現される課題の中には、「都市部と過疎地の教育機会の不平等」や「親の世帯年収による格差の再生産」などのいくつもの課題が含まれています。
言わずもがな、一つの事業ですべての課題を引き受けることはほぼ不可能です。ゆえに、課題の解像度をできる限り高め、自身が最も大切だ、これは何とかしなければならない、と感じる課題にフォーカスをすることが重要です。
先日コロナ禍中の大型調達を実現した株式会社ビビッドガーデン(https://vivid-garden.co.jp)は「農家の継承者不足」と強く叫ばれる課題の中でも、「農家はこだわればこだわるほど儲からない」という課題にフォーカスしました。
野菜に対するこだわりが写真や文章で伝えられ、値付けも自分たちで行えます。こだわりが消費者に喜ばれ、それが価値になるサービスを創り上げたのです。
農家の継承者不足、という課題の解像度ではこのサービスは生まれなかったでしょう。
2.課題を抱える人の顔が見えること
質の高い課題の条件の二つ目は、人の顔が見える状態であることです。
上記の食べチョクの例では、「こだわるほど儲からない」と嘆いている農家さんの顔が浮かんできませんか。代表の秋元里奈さんは、実家が農家であったことに加え、全国の農家さんに足しげく夜行バスに乗って会いに行ったそうです。
恐らく食べチョクには自分たちの事業で救いたいペルソナが明確にあるのでしょう。解像度が高く、悩みのイメージがついているからこそ、どんなことに困り、どんなことに喜ぶのか、どんな問いかけに反応するのかが分かる。
これは、BtoC BtoBを問いません。
自分たちの事業で救う「たった一人」が見えていること。そうすることで、絵空事ではない、リアルな課題を掴むことができます。
3.切実でお金を払ってでも解決したい悩みであること
質の高い課題の条件の三つ目は、切実な悩みであることです。
確かにその課題は存在するかもしれないけど、誰にとっても解決したいとは思えない課題では事業としては成り立ちません。
例えば、クラウド労務ソフトのスマートHR(https://smarthr.jp/)は、宮田社長が12回ものピボット(事業転換)を経て生み出した事業ですが、リリースした途端それまでの反応とまるで違ったと言います。
年末調整や労務情報管理は書類によって仕様が異なり、非効率で仕方ないけれど煩雑すぎる…と多くの人事にとっての切実な悩みだったのでしょう。
初日から問い合わせが殺到したそうです。
このように、この課題が解決できるなら、お金を払ってもいい、と思える課題であれば、事業の成功確率は当然ながら上がります。
事業創造において最も大切な観点である「課題の質」。皆様の組織においてはどのように高めていますか。
自社の既存事業が引き受けている「課題」とは何で、新規事業にとっての「質の高い課題」とはどのようなものがありそうでしょうか。
今日は「課題の質」について三つの条件で考えてみました。組織内で事業を創る際の課題の質を高める方法についてはまた別の機会にまとめてみたいと思います。