COLUMNSコラム

書籍紹介

「進化思考」から学ぶ創造性のある人の思考法〜具体編〜

2021.10.30

michinaru株式会社で学生インターンをしている若林です。

「変化を起こす挑戦者を創る」というミッションの元、新しい事業を生み出す人や組織づくりについて日々勉強をしています。

2回にわたり『進化思考―生き残るコンセプトをつくる「変異と適応ー」』太刀川英輔著を紹介しています。

前回の記事では、「進化思考」がどのような思考法なのかという概念を紹介しました。

生物と人工物に共通する「変異と適応の繰り返し」という概念を紹介しましたが、具体編の今回の記事では「変異と適応の繰り返し」をより深く理解していただくために「変異の9つのパターン」と「適応の4つの概念」を紹介していきます。

引用:「進化思考―生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」より

変異の9つのパターン

本書では変異を生み出すパターンは

「変量」「擬態」「欠失」「増殖」「転移」「交換」「分離」「逆転」「融合」

の9つであると言います。

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引用:「進化思考―生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」より

これらは、偶発的なアイデアを大量に生み出すための発想の型となります。この中でも特にユニークだと感じた「欠失」と「逆転」をピックアップをして紹介していきます。

「生物の進化」からどのように学び、人間の「創造」に応用することが出来るのでしょうか。

変異パターン 「欠失」

生物は何かを獲得するだけでなく、失うことによっても進化をしてきました。次の世代に命をつなぐときに何かをうっかり忘れてしまうのです。

トカゲに近接する種であるはずのヘビは足がなく、人間と99.77%同じDNAを持っているはずのチンパンジーには尻尾があるのに私たちにはありません。

人類は欠失的な変異を農業にも活かしてきました。

例えば、交雑育種による品種改良によって、種なしブドウを開発したように。

このような「欠失」は人工物の創造にも多く見られます。

「羽のない扇風機」というキャッチコピーによって売られている、ダイソンの扇風機を皆さんもご存知なのではないでしょうか?

これは言葉通り、扇風機から羽を「欠失」させることによって生まれた創造です。

それによって安全かつ空気清浄まで兼ね備えた扇風機を生み出すことが出来ました。他にも「題名のない音楽会」「サイレントバイオリン」「キャッシュレス決済」など、何かを「欠失」させることによって生まれた創造は数え切れません。

進化ワーク 「〜のない〇〇を想像してみる」

あるのが当たり前だと思い込んできるモノやプロセスをなくすことを創造することからもアイデアは生まれていきます。

「〜のない〇〇」「自動〇〇」「非〇〇」など言葉で連想できるものを出来るだけ書き出してみてください。

変異パターン「逆転」

アベコベガエルガエルというカエルをご存知でしょうか?

名前からして「逆転」をしていそうなカエルなのですが、なんとこのカエル、成長するにつれて、小さくなっていくのです。理由はまだわかっていないようです。

他にも、多数派の生物とは正反対の形の進化を遂げている生物はたくさんいます。

「コウモリ」や「ナマケモノ」は上下反転して、ぶら下がって過ごしていますし、「タツノオトシゴ」はオスが出産をします。

このような「逆転」は人工物の創造にも見られます。

エレベーターやエスカレーターは、人間ではなく建築側を動かすという発想によって生まれた革新的な発明です。これによって、建物は垂直方向に高く伸ばせるようになり、町の景観は一変しました。

黒板の色を反転することによって不便さを解消した「ホワイトボード」や、すでに沈んでいる船として開発された「潜水艦」は意味的な逆転によって生まれた発想です。

「〜ではない〇〇を想像してみる」

当然だと思っているモノを疑い、真逆のものを考えてみましょう。「物理的」「意味的」「関係的」などいろんな要素を逆転することができないか、考えてみましょう。

適応の4つの観点

本書で適応の思考には

「解剖」「系統」「生態」「予測」

の4種類の観点があると述べられています。

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引用:「進化思考―生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」より

この4つの視点を持ってアイデアを適応させていくことで、変異の思考で出したアイデアが創造性のあるものになっていきます。

この中でも「系統」の視点が個人的にとても新しい観点だったのでピックアップしてで紹介しようと思います。

適応「系統」の観点

「生物の進化」は長い歴史の中で今の形になってきました。細菌からいきなり魚になったり、魚から唐突に哺乳類になったりするような進化はしません。

進化はDNAの複製エラーによる「変異」と、生存競争や性淘汰などの「適応」が繰り返されることで発生するという進化論が一般的に信じられています。

生物の持つ素晴らしいデザインは誰かの手によって作られた形ではなく、進化によって自然発生する現象なのです。

人工物の「創造」も同じプロセスを経て、発生しているのであれば、人工物にも長い歴史があり、完璧なものは存在しません。

過去の偉大な発明でも、寿命を迎え使われなくなっているものが多いですよね。白黒テレビやガラケーは社会の変化によって、あまり使われなくなっています。今は、液晶テレビやスマートフォンが主流となってきました。

このように「創造」も過去から受け継がれているものだとすれば、創造の歴史的な流れを学ぶことは、イノベーションを生み出す上で大きな意味を持ちます。

前例に学び、歴史を超えることが出来れば、現代を生きる私たちにとって、大きな意味を持つ「創造」になるでしょう。

読者の皆さまが進化させたい対象は、どんな歴史の中で生まれてきたのでしょうか。当時発見された技術や、他分野での動き、広い視点を持って時代背景を捉えてみてください。

そして、現在までのつながりを理解することが出来れば私たちが何をすべきか見えてくるかもしれません。

また、過去に発明されたけれどまだ、社会にまだ広まっていないものがあるかもしれません

電気自動車の特許はなんと、1835年に出願されているようです。しかし、実用化するための技術が不足していたことや石油資源が枯渇したことによって、現在になってやっと注目をされています。

このように、歴史には今を生きる私たちが何を「創造」すべきかを考える上で大切な知識が散らばっています。

歴史から学ぶことで、変異の思考で生み出した、アイデアを磨いていきましょう。

進化ワーク「〇〇の系統樹を書いてみよう」

生物と同じように、モノにも先祖があります。そのものはどんな文脈に影響を受けて現在の形になったのか、系統樹を描いて考えてみましょう。

完成した系統樹を見ることで、過去から現在に至る歴史的な経緯を理解することができ、イマジネーションも湧いてくるはずです。

進化思考を読んでみて

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今回の記事では

『進化思考―生き残るコンセプトをつくる「変異と適応ー」』

を概念編と具体編の2部に分けて紹介してきました。

これらの記事で私が伝えたかったことは、

「創造性は誰でも発揮することができる」

ということです。

私自身この「進化思考」の視点にとても勇気づけられましたし、今は何かを「創造」したい。という気持ちでウズウズしています。

この記事が、新規事業開発に挑戦する皆様の背中を少しでも押せていたら嬉しいです。

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